約 220,410 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1518.html
ネコのマスターのクリスマス・買い物編 家を出た俺と礼奈は近所にある大きなデパートを目指して歩いていた。 「んで、何で俺だけお前の買い物に付き合わなきゃならんのだ?」 「だって、クリスマスプレゼント買いに行くんだもん。タマちゃんの好みは兄さんに聞くのが一番でしょ?」 あぁ、そういう事か。そういえばもうそんな時期だったなぁ。12月は誕生日だのクリスマスだの大晦日だのイベントが多いからなぁ。 なんて個人的な事を思いつつ、俺はサイフの危機をどう乗り切ろうか悩んでいた。 そんなこんなでデパートに到着。ここら辺では一番大きいデパートだしクリスマス間近という事もあって、店内は人で埋め尽くされている。 「うわぁ、凄い人!ケーキとか残ってるかな?かな?」 一瞬礼奈が別の世界の礼奈に見えた気がするが、気のせいだろう。 それより本当にこれではケーキはもちろん普通のプレゼントだって相応しい物が見つかるか不安だ。俺達はまず一番心配なケーキを見に行った。 タマと俺が好きなチョコレートケーキと礼奈が好きな生クリームケーキはあったが、キルケが好きなフルーツケーキは既に予約がいっぱいだった。 仕方なくキルケの分も生クリームケーキにする事にして、予約をする。 次にプレゼントだ。礼奈はキルケに服を買ってやるつもりらしい。タマには何が良いか聞かれたが去年何を渡したか思い出せない。 仕方なくタマも服で良いんじゃないか?と言っておいた。 「そういえば兄さんはプレゼントどうするの?」 「ふっふっふ。実はもう買うものを決めてある」 「本当?楽しみだなぁ♪」 そうは言ったがさて困った。本音を言えばまだ誰の分も決めていない。 礼奈に鉈なんて送ったら怒られるか?あ、いやもちろん冗談だが。 自然に目が刃物のコーナーに行きそうになるのを押さえ、真面目にプレゼントを考える。 デパートは広いのでとりあえず別行動する事にした。 そして一人になった和章を遠くから見つめる影がひとつ。 「ターゲットを捕捉。ターゲットは妹と別れ一人で行動を開始した模様。」 影の主は武装神姫、タイプはヴァッフェバニー。手に持つ無線を介して誰かと会話をしている。 「了解。引き続き追跡、監視せよ。」 無線機からの声の指示を受け、その神姫は影へと姿を消した。 そのころの山田家。 「~♪」 私がマスターの帰りを待ちながら鼻歌を歌っていると、タマがこっちに来て 「ねぇ、ますたーとレナちゃんはなんでわたしたち置いてっちゃったのかな?」 と聞いてきました。タマはわかっていなかったんですか。 「それはですね、二人がクリスマスプレゼントを買いに行ったからなんです」 「くりすます・・・あ、そっか!そういえばもうすぐくりすますだったね!」 クリスマスすら忘れかけていたようです。そう言えば前和章様からタマは物忘れが多いと聞きました。何でも誕生日すら忘れられていたとか。 マスターはきっと和章様にとても凄いプレゼントをあげるでしょうね。あんな顔でしたから。 「ぷれぜんと、たのしみだな~♪」 タマがニコニコしながらそう言ってます。確かに楽しみですね。私はクリスマスプレゼントを貰うのは初めてなので、尚更楽しみです。 そう言えばマスターのお母様の神姫のペルシスらしき神姫が二人の後をつけていたようでしたが・・・何だったのでしょうか? 何者かの視線を感じ、俺は周囲を見回す。しかし俺を見ているのはレジ打ちをしている店員だけだ。 「・・・気のせいか?家を出てからずっと誰かに見られてる気がするんだが・・・」 「お会計21894円になりまーす」 「うぅ高い・・・家族持ちニートにこの季節は辛いぜ・・・」 そんな事を呟きながら俺は会計を済ませ、今買ったみんなへのプレゼントを袋に詰める。 すると同じく買い物を済ませたであろう礼奈が俺の所に来た。 「さ、あいつらが待ってるだろうし、帰るか」 「うん!」 タマ達の喜ぶ顔が目に浮かぶ。そのせいで一度電柱にぶつかったが、そんな痛みも気にせず俺は礼奈と一緒に家に帰った。 第六話につづく 第四話に戻る ネコのマスターの奮闘日記
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2603.html
第二章 2038/2/17 04:35 同基地 私室 “『特技兵』” 「テーンッ、ハッ!(気をつけ!)」 あれから作戦評価報告書やデブリーフィングに忙殺され、私が寮の自室にたどり着いたのは軽く日をまたいで、そろそろ朝日も登ろうかという時間……にもかかわらず、私の『小さな部下』のうち数体は机の上に直立不動の姿勢でこちらに視線をよこしていた。 「まだ起きてたの?」 「ええ、まだお褒めの言葉をいただいておりません」 気だるく尋ねた私に、ダガーワンチャーリーことC分隊の指揮官を勤めるベックウィズがいたずらっ子のような笑顔を浮かべながら答える。 「褒めろって言いたいのかしら?」 「ええ、私の分隊が間違いなく一番戦功であります」 いけしゃあしゃあと言い切ったベックウィズを一日分の苛立ちを込めてひと睨みすると、彼女はやっと口を閉じた。 心底おかしそうに笑いをこらえてはいたが。 「申し訳ありません、中尉。 ベック、いい加減にしなさい」 隣にいたA分隊の分隊長。 ウェストモーランドがあまりに態度の悪いベックを注意する。 「そうね、ベック。 あのまま死んでもおかしくなかったわ」 「死なないわよ」 B分隊の分隊長。 エイブラムスがモーラに続いて苦言を呈したが、ベックは途端真面目な顔になって答える。 「あのクソッタレな戦場で何度死んでも、バックアップがある。 ですよね、中尉」 彼女の言うクソッタレな戦場……民需用のホビーである彼女たち、武装神姫の戦闘およびフィールド生成システムをDARPA(国防高等研究計画局)が軍需用に改良した最新鋭戦術・戦略シュミレーター『テキサス』の事だ。 サーバーから提供される15エーカー四方の立方体内に想定されるあらゆる条件……地形や気候だけではなく砂や埃による装備の劣化や、一体一体の体調といった概念までも再現するそれは『第二の現実』といっても過言ではなく、ウェストポイント(陸軍士官学校)でも試験的にこのシステムを利用した演習が行われているし、現在の士官教育を一変させるとまで言われている……のだが…… 「それでも、その瞬間までそこでにいた人格は消滅するのよ、ベック?」 バーチャルな死の概念。 それをシステムではデータの消去という形で表す。 彼女たちはある種本能的にそれを恐れ……結果、よりリアリティのある戦闘状況が再現される、というわけだ。 それでも、軍用である彼女たちは民需用では強固なプロテクトがかけられている情報記憶分野のバックアップが可能となっている。 早い話が演習終了時に演習開始前の状態で生き返る。 といえばわかりやすいだろうか? 「一時的な記憶喪失なんか怖くないでしょう? とかく、お褒めの言葉がいただけないようでしたら私はこれで失礼させていただきます」 ベックはかかとを合わせて敬礼すると、すばやく割り当てられたクレイドルへ潜り込み、スリープモードへと移行した。 「……中尉、そろそろお休みになられないとお体に触ります」 少々、あっけにとられていたが、モーラが心配そうに見上げているのに気づき彼女の頭を指先でなぜてやる。 「ベックは悪い奴ではありません。 ですが……」 「戦友を失ったと聞いてるわ。ヒネているというより拗ねてるのよ」 モーラが言葉を詰まらせたあとをエイラスが引き継ぎ、同じ顔をした二体の視線がクレイドルで眠る同胞に注がれる……彼女の名はベックウィズ。 消えかけた特技兵の階級章を付けた、部隊唯一の実戦経験者。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1995.html
授業 さぁーて困った事になりました。 突然の放送で困惑しながらも考え込む私。 ある意味簡単な事ですが簡単故に悩んでしまう。 いえ、私一人だけの事だったらすぐに終るでしょうが、今回は他の神姫の方々が居ますので私の独断は決める事はできません。 やはりここは話し合いをしなければ。 「サラ、アイゼン、犬子さん。ちょっと集まってくれませんか」 私の掛け声に集まってくるサラ達。 輪を作るように、というよりゲームコントローラについてる方向キーの十字キーのように集まる。 並び方的には上がアイゼン、下が私、左がサラ、右が犬子さん。 ご主人様の神姫は私含めて四人とパチモン私(シャドウの事)、合計で五人いるのでその内の私が代表で出ます。 この面子で決めないといけません。 先生役を誰がやるのかを! 「え~と、さっきの放送通りに先生役を誰がやるか、という事なんですが…どうしましょうか?」 「どうするといわれましても」 「………なんでも」 「どうしましょうか?」 やっぱりサラ達も困惑しているご様子。 アイゼンは無表情で『なんでも』と言ったのであんまり困ってないのかな? それに『なんでも』って『なんでもいい』の略? 「…あ…でも…マスターを誘惑できる…かも…」 誘惑? アイゼンのマスターって確か男性の…島田祐一さん、でしったけ。 私のご主人様より年下に見えたので高校生あたりかな。 「衣替えの時期…失敗した……次こそ…」 「次こそ女教師姿でアイゼンのマスターを誘惑するの?キャーッ!アイゼンちゃんたら大胆!!」 「……ウザッ…」 いきなりヒョッコリ、とアイゼンのバックをとりつつ天使の如くの笑みをむけるシャドウ。 ちょっと何勝手に来てるのよ! 貴女は邪魔だからクリナーレ達の所に居てよ! それにアイゼンに迷惑かけないで! あからさまに嫌がれてるよ! ていうか、ハッキリと『ウザッ』って言われたから! このKYシャドウ! 「『KYシャドウ』って言うけど、自分の事も言ってるんだよ。半分アタシなんだから♪」 「キィーーーー!!!!黙らっしゃい!」 「まあまあ、落ちついて」 「そうですよー」 シャドウに掴みかかろうとした私をサラと犬子さんが左右から掴み止める。 はっ私とした事が取り乱してしまいました。 いけない、いけない。 「そうそう、冷静になるのよ♪クールになれアンジェラス♪♪」 「その台詞は某アニメの著作権に触れそうだから言うな」 「硬いこと言いっこなし~♪」 ウザイ…本当にウザイ。 殴り飛ばしてやりたい。 そんな衝動にかられてると犬子さんが。 「とりあえず、先生役をどのように決めるかを考えましょう、なるべく公平な方法で」 「まぁ、それなら」 「……意義無し…」 犬子さんが建設的な意見を出してくれました。 正直な話、助かりますー。 というかスミマセン。 このパチモン私の所為で話しを進める事ができなくて。 サラと犬子さんが私から離れ、また最初の陣形になる。 「それで、公平な決め方とは?」 サラが犬子さんに質問すると犬子さんは困った表情になり、そして重々しく口を開いた。 「いえ、そこまではまだ考えていませんが」 「…やっぱし……」 サラの質問にあっさりと答える犬子さんに、ツッコミを入れるアイゼン。 意外とアイゼンって容赦ない? 「申し訳ありません……といいますか、何故私が謝っているのでしょう?」 律儀に謝る犬子さん、でも最後の言葉に疑問を言う。 ええぇ、それは正しい言い方だと思いますよ。 でも公平の決め方かぁ~。 実際に公平な決め方と言われてもそう簡単に出てくるものでじゃないし。 一応、この面子で話しをしてみましょう。 一方、その頃のオーナー達は。 龍悪の視点 「あいつ等、いったい何やってんだが…」 その後に『はぁ~…』と溜息をつく。 今までの一部始終を見ていてドキドキハラハラさせられてきたもんな。 オマケにシャドウも出てくるし。 でもシャドウもこの企画を楽しんでるみたいだし、殺伐みたい事はしないだろう…多分。 一時はどうなるかと思ったけど。 あ、それと。 「スマンな、島田君。シャドウの所為でアイゼンに迷惑をかけてる。謝る」 「あ、いえいえ。あの時のバトルは驚かせれましたが、今はアイゼンと仲良くやってると思います」 「…アレ、本当に仲良くしてるかな。ただたんにアイゼンにウザイと思われてるだけと思うんだが。あ、それとアイゼンが先程言ってた、『誘惑』についてだがー、何かあったのか?」 「エッ!?あ、あれはーそのー…スミマセン」 「何で謝るんだよ」 「ちょっとその話しはー…」 「あ、なんとなく解った。いいよ、言わなくて。誰にでも喋りたくない事なんてあるもんさぁ」 「そうですね」 喋り終わった後、二人で一緒に溜息を吐いたのは言うまでもない。 そして戻って神姫の方。 アンジェラスの視点 「…はぁ~なかなか決まりませんねー」 「…もう何でもいいでしょう。頭にコップを乗せて一番長く落とさなかった人の勝ち、とか」 私が言った事に相づちうちながら言うサラ。 にしても困りました。 色々な案が出ましたが、あーでもないこーでもない、と皆言ってどっちつかずになってしまい、結局の所決まってない。 『あみだくじ』『多数決』『じゃんけん』その他もろもろ…って、そんなに無いんですけどね。 でもこのままでは埒があきません。 時間も結構経ってしまったし…。 「そんなに悩んでるなら『じゃんけん』でやればいいのに♪」 再びヒョッコリ、と顔を出すシャドウ。 このお邪魔虫をまずどうにかするのが先決かな? 「まぁまぁ、そう怒りに身をまかせちゃダメよ。アタシが何故『じゃんけん』を選んだか分かる?」 「分からない」 「分かりませんね」 「………」 「申し訳ありません、判りかねます」 一斉に『分からない』コール。 アイゼンだけは顔を左右に振ってジェスチャーする。 するとシャドウが何気ないセクシーポーズの格好しながら。 「私達は何で出来ている?『身体は素体でできている』なんて答えた人には、エクスカリバーをあげる♪」 「だからそういうネタは止めなさいって、ていうか、そういうのどっから覚えてくるのよ」 「マスターのパソコンにインストールされてるエロゲーから閲覧したの♪」 「…あっそー、で結局の所何が言いたいのよ」 「私達は武装神姫。人間より細かく動作を見れるじゃない。故に誰が『後だし』したか分かる、という事よ♪」 あーなるほど、確かにそうですね。 人間の反応速度と武装神姫は違います。 神姫同士ならバトルで鍛えられた反射神経みたいのが作動して瞬時に動くはず。 これなら『じゃんけん』でも構わないかもしれませんね。 「それを言うならばシャドウさん、一つ疑問があるのですが」 「はい、そこのプリチーな犬子さん。何かな?くだらない事言ったら、もれなくアタシからR‐18の世界に連れて行くプレゼントをあげる♪」 「疑問一つ挟んだだけでそこまでリスクを負わねばならないとは、どこの圧政地区ですか」 「はい、そこでチャカさないの」 ポカっとシャドウの頭を叩く。 まったくこのシャドウはマジでどうにかなんないかな。 いっその事、何かに頭を打ち付けて死ねばいいのに。 「冗談、冗談よ♪で、何?」 「あの、私たちは今現在、このヴァーチャル世界で能力制限されていて、通常の人間と同じ程度の能力しか発揮できないはずです。当然、反応速度も」 「ん~…やっぱりくだらない質問だね。そんな犬子さんにR‐18指定世界に突入♪」 「い、いえ貴女先ほど、冗談と仰っていたはずですが」 犬子さんは、じりじりと後ずさりしながら答えた。 さすがの私も『仏の顔も三度まで』です! 「いい加減にしなさい!」 今度はグーでシャドウの右を殴り犬子さんを助ける。 というか殴り飛ばしってやった。 殴り飛ばされたシャドウは勢いよく机と椅子を巻き込みながらゴロゴロと転倒する。 これ以上犬子さんに迷惑かけるなら本気で潰すよ! 「も~、容赦ないなぁ~アタシの半身は。分かったわ、ちゃんと説明するからカッカしないで。犬子ちゃん、アタシを誰だと思う?」 殴りとばされたのにも関わらず涼しそうで平気な顔しながら起き上がるシャドウ。 やっぱり、あの程度じゃダメなのね。 「は?ええと、アンジェラスさんのシャドウだとお伺いしましたが」 「正解♪そしてアタシはこのヴァーチャル世界、基、この筐体システムを掌握してるのよ。つまり『じゃんけん』する時だけ本来の皆の反応速度を元に戻す事ぐらい造作もないって事よ」 「…チート野郎……」 「あら、可愛いアイゼンがそんな乱暴な言葉を使っちゃだめよ♪因みに女に向かって言っているから『チート野郎』じゃなくて『チートアマ』って言わないと♪♪女に対しては『アマ』だから♪♪♪」 さりげなくアイゼンが嫌味を言った。 それをどうでもいい事でシャドウが訂正する。 訂正するのは良いとして、文句言われてる事に腹立たないのかな。 まぁ常に機嫌を良くしてるみたいだからいいか。 「では、やりましょうか?」 「…やる」 サラとアイゼンはもうじゃんけんの構えをとっていた。 「最後に負けた人が先生役をそれでいいね!」 私がそう言うとサラ達が無言で頷く。 よし、準備は整った。 あとは運のみ! 「いくよー!じゃんけん!」 パーを出す チョキを出す グーを出す 銃を出せばいいんじゃないの
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1446.html
アンジェラスの愛を受け入れる。 こうなってしまったのもの俺の所為だ。 アンジェラスにとってこの罪とは愛情表現だ。 だから俺はこの罪を受け入れる。 「俺は愛してるよ、アンジェラス」 「ご主人様!」 アンジェラスの奴は俺の顔に飛びつきキスしてくる。 しかも狂ったかのように。 ちゅううっ…れろっ…くちゅくちゅくちゅっ…… 「…んふ…ん…じゅる………!」 「……んぅ………」 激しく唇同士ぶつけるアンジェラスと俺。 でも人間の俺に武装神姫のアンジェラス。 身長差が違うし唇の大きさも違う。 それでもアンジェラスは一所懸命にキスしてくる。 いや、キスというよりディープキスだ。 「ご主人様は私のモノ。この世の中でたった一人の…」 「………アンジェラス…」 「たった一人の愛しい人。殺したい程に…」 言い切り終わるとまたキスしてきた。 もう俺はアンジェラスに身体を預けていたので何されようがどうでもよかった。 そして明日から新しい生活が始まるのだ。 アンジェラスと俺だけの生活が…。 …。 ……。 ………。 「おい、ルーナ」 「あ、どうでしたダーリン?あたしの小説は??」 俺は神姫用のスケッチブックを机に置く。 そして一言。 「ボツ!」 「酷~~~~い!!!!」 俺の返事に困惑するルーナ。 どうやら期待していたみたいだ。 でも残念だったな。 結果はボツだぜ。 「ヤンデレなのはいいんだけど、なんで俺達がキャラなんだよ?」 「だって扱いやすいでしたんだもの」 「肖像権侵害で訴えてやろうか?」 「そんなぁ~…」 今度は泣きそうな顔をしながら俺に迫ってくる。 その時だ、ルーナの巨乳がブルンと動いたのは。 もう溜まりません。 性欲を持て余す。 「特盛り!」 「はい?」 「あぁーいや、何でもないよ!気にすんな!!」 「変なダーリン?じゃあ今度はオリジナルキャラクターで書けば大丈夫ですね」 「ん~まぁ、多少良くなるんじゃないのか」 「ではすぐに書きます!楽しみに待っていてくださいね、ダーリン♪」 「…おう」 できれば、書いて欲しくないがそんな事は…言えないよなぁ。 ルーナの心底悲しむ顔なんか見たくないしな。 でもなんでいきなり小説なんか書こうとしんたんだろう? 動機がさっぱり解からん。 まぁいいや。 俺はパソコンに向かいヤンデレが出てくるエロゲーを起動する。 えぇーと、確か三日前のセーブデータは…あれ? なんか知らないセーブデータがあるぞ。 試しにそのセーブデータをロードしてやってみた。 するとゲームはすぐに終わって画面はスタッフエンドロールになってしまった。 ちょっ!? もう終わっちまったぞ! 俺はここまでゲームを進めた覚えはないし…。 ん~! ちょっとまて、パソコン、ヤンデレ系のヒロインが出てくるエロゲー、そしてルーナが書くヤンデレ系の小説…。 あぁ~そいう事か。 ようやく解かったよ。 「ル~ナ~」 「な、なにダーリン?変な呼び方なんかしちゃって」 「五月蝿い!テメェ、また俺のエロゲーをやったろ!」 「ゲッ!?バレてしまいましたわ」 「『ゲッ』じゃねぇー!つーかぁ、毎回毎回俺のアカウントによく入れるよな。一周間ごとにパスワードを変えているんだぞ」 「ダーリンのパスワードなんてお茶の子さいさいですわ!」 「威張るな!今日という今日は許さん!!擽りの刑に処す!!!」 「キャハハハハーーーー!!!!ゆるじでーーーー!!!!」 俺の部屋でルーナの叫び声が響く。 その叫び声を聞きやって来たアンジェラス達。 そして俺とルーナが戯れている姿を見てクスクスと笑われたのは言うまでもない。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/190.html
前へ 先頭ページ 次へ 第三話 エイダ クエンティンは混乱していた。 まばゆい光に包まれたと思ったら、ボディが今までのとぜんぜん違うものにすげ変わっていたのだから混乱しないはずがない。いや、すげ変わっていたのではなく、これは本来のボディそのものが変化したのだ。見たこともないエネルギーラインが体を取り囲み、見たこともない装甲が全身に取り付けられている。というよりは装甲そのものも体の一部のようだった。 あまつさえ当たり前のように空中に浮遊している。アーンヴァルのような推進器の類はなく、背中に生えた小さな羽根からしゃわしゃわと出ているエメラルド色の粒子だけで、轟音も地面に吹き付ける風圧も無く、ただ浮いているのだ。 こんなことになった原因はすぐに分かった。あの銀髪の変な神姫だ。あの変な神姫が自分の頬を触ったと思ったら、消えて、なぜかその神姫の声が今は自分の中から聞こえてくる。 ということはその神姫は自分の中にいるという解釈がごくごく自然に成り立つが、ちょっと待った、とクエンティンは類推を引き止めた。 ありえない。そもそも自分の中にいるというその事実こそがありえない。純然たる世界の物理法則からして、二つのものが一つになるなんて絶対に起こらない。いや、一つになって質量が単純に二倍になるならいい。それは合体であり、物理法則になんら抵触していない。 一つになったのに質量が二倍に達していないのが問題なのである。たとえあの神姫自体がこの珍妙なアーマーに変形したのだとしても、二倍には程遠い。せいぜい一.三、四倍くらいだ。残りの六、七割はどこへ行ったのか。消えるということは無い。なら、融合したとしか考えられないのだが……。 『そのとおりです』 あの声がまた中から聞こえた。頭ではなく、胸の中、心臓の辺りから聴覚センサーを経由せず、陽電子頭脳の意識レベルに直接響いてくるらしかった。 「ちょ、ちょっと待ってってば、どーゆー原理でそうなってるわけ? そもそもアンタ誰?」 声に出して、クエンティンは訊いた。理音を含む周囲には独り言にしか聞こえないのではないかと彼女は思った。 『いま説明している時間はありません。ボギー、総数一二機。包囲されています。危険度レッド。脅威度イエロー。今すぐ戦闘行動を開始してください。ボギー1、8、来ます!』 「ええっ!?」 キルルルルッ 包囲している一つ目どものうち二体が、小さな羽根からオレンジの粒子を撒き散らして接近してくる。 クエンティンは慌てた。フロストゥ・クレインは足元はるか下に置き去りにされており、取りに行く暇は無い。 「ぶ、武器は!?」 『使用可能武装情報および取り扱いマニュアル、オープン』 声がそう言った途端、クエンティンはいくつかの武器がこの体にあることと、その使い方を思い出した。教えられたのだ、口頭ではなく情報として、やはり直接、陽電子頭脳へ。 右手を前方の一つ目、識別名ボギー1へかざす。 ツ、ツ、ツシュッ! 胸部の球体から右手へ伸びるエネルギーラインが点滅し、手のひら下のスリットから、全身を走ったり羽から出たりしているエネルギー粒子と同じ色をした粒子の塊が高速で三連射された。 三つのエネルギー塊は突進してくるボギー1にすべて命中し、足止めを果たす。 その流れで、手首にフォールドされているあの細長いブレードを展開、上体を右に回転させ、右後方へ切りつける。 シュパンッ! そこに丁度接近していたボギー8が、胴体から真っ二つに切り離された。 『ボギー8撃破』 そのままの流れで、もう眼前に肉薄していたボギー1へ、返す刀を真上から脳天へ振り下ろす。 シバッ! 刃を受けたボギー1は縦に半分にされて地面に落下、そのまま爆発した。 『ボギー1沈黙、8を除くボギー2から12、来ます』 残りの十体が一斉に突撃する。 衝突寸前、クエンティンは左手でボギー7をがっちりと引っつかむ。吸い付くような感触。グラブ機能だ。 そのまま最大出力で真下へ離脱する。小さな羽根からエメラルド色の粒子が大量に放出され、クエンティンは猛スピードで地面へ接近する。思わぬ加速に彼女は面食らった。 『衝突警告!』 「ぐうっ……!」 むりやり推進ベクトルを真横に切り替える。 バ、シャウッ! 地面すれすれで、たいしたGも無くすんなりと、クエンティンは真横に移動することができた。 そのまま真上を振り返り、敵集団へ左手のボギー7を力任せに投げつける。 目にも留まらぬ勢いでボギー7は敵集団へ衝突。それを含む三体のボギーはその衝撃で爆砕。 『ボギー2、7、12、撃破』 続いてクエンティンは背中に意識の一部を集中。 視界の生き残ったボギーにそれぞれロックオンシーカーが表示される。 ガシォーン! ロックオンレーザーである。直進しかしないはずのレーザーが、何十本、生き物のように曲がりくねって、数本ずつ一つ目どもに向かってゆく。 命中。 衝突でダメージを受けていた二体がそれで機能を失い落下した。 『ボギー4、5、撃破』 残り五体は距離をとって態勢を立て直す。 「何、この機動性……」 ここまでかかった時間は五秒にも満たない。性能を極限まで追及したアーンヴァルでさえ、こうはいかない。 「アンタ何者?」 クエンティンは声の主に訊ねる。 『独立型武装神姫総合戦闘支援システムプロトタイプ、エイダです』 エイダと名乗った声の主は、抑揚の少ない口調で答えた。 「ンなの聞いたこと無いわよ」 『公に対する情報開示はまったくなされていません』 「じゃあ聞くけど、アンタどこ製?」 『回答不能』 「同郷? BLADEダイナミクス? 少なくともカサハラインダストリアルじゃないわよね」 『回答不能』 「……もしかしてEDEN本社?」 『回答不能』 クエンティンは頭に来た。 「アタシのボディ間借りしといて回答不能は無いでしょ!?」 『申し訳ありません。情報プロテクトがされており、責任者の許可が無ければ開示できません』 そっけなく、エイダは答えた。 だったらなんで、独立型うんたらかんたらプロトタイプって自己紹介できたのよ。 クエンティンは憤りを禁じえなかった。 まったく、とんだ災難に巻き込まれちゃったわ。 「こんな道端のど真ん中で氷雪浴してた理由も回答不能?」 『申し訳ありません』 「もういいわよ」 はあ、とクエンティンはため息を吐く。本当に災難だ。 「そうだ、お姉さまは!?」 あたりを見回す。電柱の影で手を振っている理音の姿が見えた。 良かった、無事だわ。 キリキリキルッ それにつられたのか、残った五体の一つ目どもが理音のほうを向いた。 そのまま彼女へ近づいてゆく。 「なんで!?」 クエンティンは反射的に飛び出した。 明らかに一つ目どもはお姉さまを襲おうとしている! ロボット工学三原則、改名、人工知能基本三原則にばっちり抵触しちゃってるじゃない! なのになんで!? 簡単に一つ目どもを追い越し、クエンティンは立ちはだかった。 「アンタたち、人間を襲うの!?」 一つ目どもは答えない。発声器官が無いのだ。 突撃が答えだった。 「ちくしょー!」 クエンティンはブレードを展開、一番近いボギー10に急接近し袈裟懸けに切りつける。主エネルギーラインを断ち切られたボギー10は力を失って墜落。 切りつけた勢いを反転させ――やはり不思議なことに反動は無かった――正反対を飛んでいたボギー6の頭部を貫き、ブレードに挟ませたままその場で八の字にぶん回す。ボギー3,11がぶつかり、三体はまとめて爆発四散。 『ボギー10、6、3、11、撃破。敵、残り一体です』 「きゃああ!」 理音の悲鳴。 唯一残ったボギー9が、もう理音の目の前まで近づいていた。両手を真上に掲げている。 両手の先からオレンジ色のエネルギーカッターが伸びる。 「しまった!」 クエンティンは彼女の元へ飛ぶ。 だめだ、間に合わない! ボギー9が理音へカッターを振り下ろす。 パンッ、パンッ! まったく予想外の方向から甲高い破裂音が響き渡った。 ボギー9は何か強烈な勢いを持ったものに弾かれ、電柱に激突し破裂した。 理音とクエンティンは音のした方向を振り返る。 高級そうな白いスーツを着た、金髪オールバックの、眼鏡をかけた長身の青年が、煙を吐いている拳銃を持って立っていた。本物の拳銃である。 彼の後方には頑丈そうな真っ黒いサルーンが停まっている。 「こんなところで貴様に会うとはな」 「あなた……」 理音はその青年を知っていた。 以前とあるセンターの、リーグ無差別エキシビジョンマッチにおいて戦い、すんでのところでクエンティンが敗北した、「ルシフェル」という武装神姫のオーナー。 鶴畑コンツェルンの御曹子、長男、鶴畑興紀である。 「まさか拳銃で壊せないとは。たいした新型だ」 鶴畑興紀は地面に転がっている一つ目の残骸を見ながら、ひどく感心した様子で言った。 キルキルキルキルキルキル キリキリキリキリキリキリ さらに生糸を引っかくような音が何重にも聞こえた。 理音たちの後ろの道から、吐き気を催すような大量の一つ目 どもが現れ、近づいてきたのだ。 「こんなにいるなんて!?」 「チッ、乗れ!」 興紀は二人に手招きをし、サルーンへ乗り込んだ。 理音とクエンティンは一瞬迷ったが、選択の余地は無かった。このままこの場に居たのでは確実に嫌なことになる。 「何をしている!」 興紀は怒鳴った。 二人はバックを始めているサルーンへ飛び込んだ。 ドアが自動で閉まる。 「じい、出せ」 興紀は運転席の執事に命じた。 「かしこまりました。お二人とも、シートベルトをきちんとお締めになってくださいませ」 興紀も理音もベルトを締め、理音は懐へクエンティンを忍ばせた。 「行きますぞ!」 白髪の執事はシフトレバーを切り替え、アクセルを踏み込む。 狭い道路を、大型のサルーンがぶつかることなく颯爽と走り抜ける。 サルーンは逃走に成功した。 しばらくその場でうろうろしていたが、ややあって、一体残らずどこかへ飛んでいってしまった。 裏路地に静寂が戻った。 つづく 前へ 先頭ページ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2533.html
MMS戦記 外伝「敗北の代価」 「敗北の代価 10」 注意 ここから下は年齢制限のある話です。陵辱的な描写やダークな描写があります。 未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。 熱弁を振るう春日に神代が冷ややかに答える。 神代「それで、このアヴァロンに来た目的はなんだ?」 春日「目的?決まってる私のリカルダで戦うことだ」 神代「・・・そういうことを私は聞いているんじゃない」 春日「ではでは、どういうことかな?」 神代「ふう・・・・」 神代は手元にあるワインを飲み干す。 神代「腹を割ってずばり話そうか・・・春日の狙いは6000万か?」 春日「NO!そんな端金には興味ない」 神代「ではなんだ」 春日「真相を知っているな?神代」 神代「ふ・・・あっははっははっはは!!」 神代は大声で笑う。 神代「もちろんだ。面白いから黙ってみている。どうしようかは悩んでいるがね」 春日「可哀想なのは騙されているあの2人だな」 神代「まったくだ、ひでいことをする」 春日「まあ、お金のためだ、仕方ない」 天使型のルカはなんのことか分からず首を傾げる。 ルカ「・・・一体何の話をしているのですか?」 神代「大人の話だ。それも金と女の絡んだ話だ」 ルカ「なんだか複雑で難しそうですね・・・」 春日「ノンノン」 春日が指をふる。 春日「これはとっても単純で分かりやすいことだよ」 神代「さて・・・それで春日はどうするつもりだ」 春日「決まっている、せっかくアヴァロンまでやってきたんだ。思いっきり暴れさせてもらう」 神代「あいつはどうするつもりだ?」 春日「・・・さあて、どうしようかな?」 春日はペロリと舌なめずりする。 春日「まるごと喰ってやるのも手だ」 神代「私は遠慮しとくよ」 春日「あっははっははは!!では、まずは挨拶代わりに派手にいこうか・・・」 春日の目が怪しく光る。 東條「レディース・アンド・ジェントルメンッ!!!武装紳士および淑女の皆様、大変長らくお待たせしました。今宵のメイン・イベント!!!スペシャルマッチを始めたいと思います」 観客たちが一斉にパチパチと拍手を行う。 台座の中央に、東條が毎度のことながら大げさなパフォーマンスで挨拶を行う。 □サンタ型MMS 「カミュ」 ?ランク オーナー名「東條 輝」♂ ?歳 職業 ??? 東條の肩からぴょんと青色のサンタ型神姫が飛び出す。 カミュ「ヨロシークー今日も元気ー」 観客席から声があがる。 観客1「カミュちゃん可愛いーー!!」 観客2「勝たせろ!!」 観客3「さっさとハジメロ!!」 東條はパンと手を叩く。 東條「さて、それでは今宵のメイン・イベント!!!スペシャルマッチを紹介しましょう。まずは青コーナー、SSSランクの強ランカー「春日」氏の有する『リカルダ』!!」 春日にすっとスポットライトが当たる。 春日「やあやあ、皆さんこんばんは、今日はじめてアヴァロンに乗船したが、なかなかいい船だね・・・気に入ったよ、派手に暴れさせてもらうつもりだ。だから諸君らも派手に遊びたまえ、今日は燃える戦いになるように・・・ささやかなお楽しみを持ってきた」 そういうと春日は指先にピラピラと小切手をはためかせる。 東條「ルールを説明しましょう。春日さまのリカルダに勝利すれば賞金1億円が支払れます」 会場がざわざわとざわめく。 観客4「い、一億ゥ?」 観客5「おおおおおお!!一億キター!」 観客6「なんだなんだあの女!海原よりも気前がいいぞ!!」 観客7「おいおいまじかよ!!!」 観客8「億来るか」 観客9「すっげえーーー!!!」 観客10「さすがアヴァロンだぜ・・・そこら辺の非公式バトルロンドとは桁違うわ」 観客11「ホンモノ」 観客12「くそう、俺も参加すりゃよかった」 ざわめく観客たちを尻目に春日は涼しい顔をしている。 東條「今宵は1対100の変則バトルロンドとなります。対戦相手は現在このアヴァロンに乗船しているオーナー様たちです。このバトルロンドに参加するに当たって一人当たり5万円の参加費で参加できます。現在、このバトルに参加している方々は以下の通りです」 ずらっと並ぶオーナーたちの名前と参加する神姫たち。 春日がちらっと一瞥する。 春日「ふっ・・・」 鼻で笑う春日。 東條「では、今回の戦っていただくステージはこちら砂漠ステージです。ご覧ください。」 小学校の標準的なプールサイズ、幅12m×長さ25mほどのステージには荒涼とした砂漠が再現されていた。 東條「このステージで今回は戦っていただきます」 カミュが捕捉説明をする。 カミュ「砂漠での戦闘になりまーす。砂丘や岩なんかの障害物をうまく利用して戦ってね」 東條「ルールを説明しましょう。1対100のデスマッチ、相手がサレンダーもしくは機能停止すれば試合終了です。武装・戦術はなんでもなり、バトルはこのステージ内のみ、ステージにはみ出た場合は失格となります。制限時間は無し、双方の対戦相手を全滅させたほうが勝ちです。なお春日さまの『リカルダ』にとどめを刺したものが1億の総取りとなります」 カミュ「シンプルシンプルー」 東條「相応以上のルールでよろしいですね」 対戦相手の神姫やオーナーたちはニヤニヤと笑う。 オーナーA「いくらなんでもバカすぎるだろあのアマ」 オーナーB「舐めすぎだろ、SSSクラスだからって調子乗りすぎだな オーナーC「クソッタレ、やってやる!」 オーナーD「ぽんと一億か!!舐めやがって」 オーナーE「キチ○イめ」 東條「ちなみにこのバトルロンドは、ネットの裏サイトでも生中継で公開されます。お互い、素晴らしいバトルを望みます」 カミュ「ネットのみんながどっちが勝つかお金を賭けてね!」 春日がアルミ製のケースの金具をパチンパチンとはずす。 春日「さて・・・始めようか、リカルダ」 アルミ製のケースの中で、白と紺のツートンカラーの重武装の神姫がゆっくりと目を開ける。 キラリと紅の瞳が光る。 リカルダ「戦闘システム起動・・・」 神代が2階の観客席でルカと共に観戦する。 神代「ルカ、よく見とけよ・・・あれが春日の誇る最新鋭の武装で身を固めた武装神姫・・・リカルダだ」 □ 重邀撃戦闘機型MMS「リカルダ」 SSSランク 二つ名「ミョルニル」 オーナー名「春日 凪」♀ 20歳 職業 神姫マスター 対峙する赤コーナーの対戦相手の神姫たちは多種多様な神姫で構成されていた。 大型の戦艦型神姫や軽量の忍者型、大剣を握り締める騎士型、機関銃に弾を込める戦闘機型などなど・・・ 東條「では、皆さん準備はよろしいですね・・・ではバトルロンド・・・・レディーーーーーーーーーーー」 ヒュイイイイイイン・・・・ リカルダのエンジンが風を切り唸り声を上げる、キラキラと緑色の粒子が舞う。 東條「Go!!」 砂漠ステージの中央に、何隻かの戦艦型神姫がバトル開始と共に強烈な艦砲射撃を加える。 重装甲戦艦型神姫A「全艦砲撃開始ッ!!!我に続け!!」 大型の重装甲の戦艦型神姫が艦橋から発光信号をチカチカと光らせ周りの戦艦型や戦車型神姫、砲台型神姫に合図を送る。 巡洋戦艦型A「100対1なら負けはせん!」 装甲戦艦型A「主導権はこちらにある、速攻で決めるぜェ」 装甲戦艦型B「ひゃっはああーーー!!!一億円は俺のものだァ!!」 巡洋戦艦型B「ファイヤ!!」 戦車型A「鈍亀の戦艦型に負けるな!全車両一斉砲撃!!」 戦車型B「パンツァー2了解」 戦車型C「パンツァー3了解」 戦車型D「撃て撃ちまくれ!!」 砲台型A「くそう!!砲台型を舐めるな!」 砲台型B「畜生!戦艦型に戦車型の連中、調子に乗りやがって!」 砲台型C「撃って撃って撃ちまくる!!一度やってみたかったんですよね!!」 総勢30機あまりの大砲を主兵装備とする砲撃タイプの武装神姫が一斉にリカルダのいる地点に猛砲撃を仕掛ける。 リカルダのいる場所は着弾によるすさまじい猛砲撃で地面が抉り飛ばされ、土煙と土砂と黒煙でまったく見えない。 騎士型「大砲屋の連中、めちゃくちゃしやがる」 忍者型「うううー私らの出番ってあるのかな?」 悪魔型「私もハンマーじゃなくて大砲もってくりゃよかった」 サソリ型「砲撃が怖すぎて近づけない」 侍型「開幕砲撃止めて」 しょぱなからの猛烈な砲撃にたじろぐ他の神姫たち。 ズンズズズウン・・・ 砲弾が着弾するたびにステージがグラグラとゆれる。ステージ全体には硝煙と爆風で煙が充満し、視界が恐ろしく悪い。 戦闘機型「何も見えない」 天使型「センサーが砲撃のショックでパニック起こしてパア」 セイレーン型「あのアホ共!!!私たちのことも考えないよ!」 コウモリ型「まったくだ!」 上空で砲撃が止むまで待機している航空神姫たちがぼやく。 激しい砲撃が間断なく続く。 戦艦型のオーナーたちはもう勝った気で分け前の相談までし始める。 オーナー1「ははっは!!ちょろいものだな!」 オーナー2「所詮は我が戦艦型神姫の敵ではないな」 オーナー3「一億円は私の神姫のものだ」 オーナー4「待て待て、お前らが倒したとは限らんだろ」 オーナー5「私の砲台型の弾が当たったかも知れない」 オーナー6「あんなへっぴり腰で撃った弾が当たるものかよ」 オーナー7「戦果を確認だ!!砲撃止め!!」 ズンズンズウズン・・・・ 戦艦型、戦車型、砲台型神姫の砲撃が止む。 春日は砲撃が収まったのを見て、指示を下す。 春日「リカルダ、敵MMS集団を撃滅しろ」 リカルダ「Sir,Yes sir MyMasterrrrrrrr」 何が起きているのが分からなかった。 パンッと空気が爆ぜる音がしたかと思うと、一瞬にして1ダースほどの前方に展開していた騎士型や戦乙女型の神姫が木の葉のようにバラバラになって砕け散った。 撃破のテロップが流れる。 □騎士型MMS 撃破 □戦乙女型MMS 撃破 □忍者型MMS 撃破 □フェレット型MMS 撃破 □犬型MMS 撃破 □虎型MMS 撃破 □天使コマンド型MMS 撃破 □リス型MMS 撃破 □ヤマネコ型MMS 撃破 □悪魔型MMS 撃破 □ウサギ型MMS 撃破 □ハイスピードトライク型 撃破 撃破された後に、物凄い斬撃音と爆発音が響き渡る。 リカルダの攻撃は音速を超え、後から攻撃した音が追いついてきた。 目を丸くする観客とオーナーたち。ぽかんとする神姫やオーナーたちを尻目にリカルダが真っ赤に燃え盛るナギナタを豪快に振り回し、戦国時代の武将のように名乗りを上げる。 リカルダ「やあやあ、遠からんものは音にもきけ、近からんものはよって目にもみよ。我こそは打ち砕く者、リカルダなりッ!!!!」 ダンッ!!!地面を力強く踏みしめ、リカルダがケダモノのように叫ぶ。 「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!!大暴れしてやるぜェ!!!!!!!!死にたい奴はとっとと掛かって来いやァ!!!!!!!!ぶっ殺してやるッ!!!!!!ぎゃっはっははっはははッ!!!!」 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>「敗北の代価 11」 前に戻る>「敗北の代価 9」 トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2256.html
ウサギのナミダ・番外編 黒兎と塔の騎士 中編 □ ランティスの瞬発力に、俺は目を見張る。 一瞬とはいえ、ティアが反応できていなかった。 初撃はからくもかわしたが、油断はできない。 あの瞬発力を持ってすれば、たとえティアの高速機動を持ってしても、打ち込むチャンスは何度も作れるだろう。 ランティスは今、油断なく構えている。隙は見えない。 俺からティアへの指示はない。今はまだ。 ゲームは始まったばかりなのだ。 ◆ 一方、鳴滝もまた、ティアの機動力に舌を巻いていた。 ランティスの踏み込みをかわした神姫はそういない。あのクイーン・雪華でさえ、ランティスの攻撃を捌くのがやっとだったのだ。 「あれをかわすか……」 『我が女王が推挙するだけのことはある、ということでしょう』 ランティスの言葉に、鳴滝は頷き、そして笑みを浮かべた。 そう、こういう相手を求めていた。 ランティスと同じ土俵で戦ってなお、互角に戦える好敵手。 鳴滝はディスプレイに目を移す。 構えているランティス。 対してティアは、腰を落とした体勢から加速しようとしていた。 ■ わたしはランドスピナーをフル回転させ、一瞬にして加速する。 塔の壁の輪郭が崩れ、流れていく。 わたしはトップスピードに乗り、ランティスさんの周囲を走り回る。 ランティスさんは動かない。 わたしの動きにあわせ、身体の向きを変えるだけ。 わたしは、ランティスさんの左右に飛び違うように走ったり、大きくジグザグに走ったりして揺さぶりをかける。 やりにくい。 塔の最下層は、ただ何もない円形の平面だ。 廃墟ステージと違って、身を隠す場所もウォールライドできる壁もない。 だから、自分の走りだけで、ランティスさんに隙を作らなければならない。 だけど、ランティスさんに油断はない。 常にわたしに意識を集中している。 この状況で、相手に隙を作るのは、とても難しい。 わたしはさらに加速する。 とにかく動き、ランティスさんの背後をとろうと揺さぶりをかける。 その速度は彼女が振り向くよりも速くなる。 「くっ……」 そしてついに、ランティスさんがわたしの動きを追いきれなくなる。 今! 彼女はまだ、肩越しにわたしを見ているだけ。 振り向きはじめたばかり。 わたしはランティスさんに向けてダッシュする。 右手のコンバットナイフを閃かす。 でもさすが、近接格闘最強の神姫。 振り向きざまの籠手で、わたしのナイフを受け止めた。 さらにわたしの機動。 さっきのお返しとばかり、ナイフを振った勢いを殺さず、そのまま身体を回転させる。 右足を振り上げ、回し蹴り。 「くうぅっ!」 わたしのレッグパーツがランティスさんを襲う。 でも、ランティスさんは、両腕の手甲を揃えて構え、わたしの蹴りを受けた。 いくらライトアーマー並とはいえ、レッグパーツは神姫の通常素体以上のパワーがある。 受けたランティスさんは後ろに大きく弾かれた。 □ だが、ランティスの弾かれ方は、俺の想定と明らかに違っていた。 ランティスは予想よりも大きく後方に弾かれている。 衝撃を吸収するために、自ら後方に跳んだのか。 その証拠に、ランティスは体勢を崩さず着地した。 すぐに両腕をおろすと、構えをとり、臨戦態勢を整える。 ダメージは見られない。 さすがは近接格闘戦で秋葉原最強クラスというだけのことはある。 それにしても。 ランティスの動きは不思議だ。 ランティスはサイフォス・タイプをベースにしたカスタム機であることは疑いない。 サイフォスは確かに近接戦闘が得意な神姫だが、ソードやランスで戦うのが一般的だ。 徒手空拳で戦うサイフォスなんて、聞いたこともない。 それに、先ほど見せたランティスの踏み込みは、普通のサイフォス・タイプの機動と明らかに違っている。 どちらかといえば、ランティスの動きはキックボクシングのように見えた。 いまもまた、構えるその姿は立ち技を得意とした格闘家のようだ。 「なるほど……だから、ナイト・オブ・グラップル……格闘騎士というわけか」 俺は思わずつぶやいていた。 ◆ 「なんていうか……地味な戦いだなあ」 安藤が何気なくつぶやいたその言葉に、涼子は額を押さえてため息を付いた。 「これだから素人は……」 「なんだよ」 「ランティスの動きは、標準のサイフォス・タイプの動きじゃないわ。ということは、マスターが神姫に教え込ませた技ってこと。それをあそこまで練り上げているなんて、どれほどの修練だったのか……想像を絶するわ」 涼子は合気道をたしなむ武道家である。 だからこそ、ランティスの動きが尋常でないことが分かる。 それに、涼子の神姫・涼姫は、オリジナル装備を使う。だから、技の修練については人一倍思うところがあるのだった。 ティアとランティスのバトルは、弾丸やレーザーが飛び交うバトルに比べれば、確かに派手さにはかけるだろう。 だが、あの至近距離での攻防は、まるで薄氷を踏むがごとき緊張感と危うさをはらんでいる。 「しかも、まだ両マスターとも、指示らしい指示は出していない……神姫が思うままに戦ってるってことは、純粋に、練り上げた技同士の応酬ってことだわ」 「はあ……」 安藤はアルトレーネ・タイプのマスターで、現在自分のバトルスタイルを見つけようと研究中である。 涼子ほどにはまだ、バトルロンドを見る経験を積んではいない。 だから、このシンプルな戦いを、なぜ涼子たちが真剣に観戦しているのか、わからないのだ。 「安藤くん。このバトルはしっかり見て。きっとティアがすごいってことがわかるはずだから」 美緒にそう言われてしまっては、大人しく観戦するほかない。 自分たちの窮地を救ってくれた男はどんなバトルをするのか? それにはとても興味がある。 安藤が大型ディスプレイに視線を戻す。 「えっ……?」 画面の中。 ランティスが構えていた両腕を降ろすところだった。 腕の力を抜き、だらりと下げる。 顎を引き、肩幅に両脚を開いたまま、直立している。 そして、ランティスは目を閉じた。 「心眼……?」 「そんなこと、できるわけないでしょ!?」 安藤の言葉を即座に打ち消したのは涼子だった。 目を閉じ、視覚以外の感覚を研ぎ澄ませる、という手法は確かにある。 しかし、実戦において視覚を閉ざすということは、自らハンデを背負うことに他ならない。 「武道の達人だって、戦闘中に目を閉じてガードを解くなんて真似……できるはずない」 そもそも、神姫が感覚や勘に頼ってバトルするということが、涼子には納得が行かない。 ならばなぜ、ランティスは目を閉じた? ティアは動かない。 ランティスは明らかに、ティアを迎え撃とうとしている。 あえて隙を作って誘っているのだろうか。 ギャラリーもざわめく中、状況はしばし膠着していた。 ■ わたしには、ランティスさんの意図が読めなかった。 構えを解き、目を閉ざすなんて。 自ら不利な状況に追い込んでいるだけなのではないか。 だけど、油断はできない。 動かないランティスさんを前に、わたしも動けずにいる。 わたしのAIがマスターの言葉を反芻する。 『いつも考えながら戦え』 わたしは考える。 彼女は今まで出会ったどんな神姫とも違っている。 ランティスさんの今の状態は「隙」ではない。 おそらくは、「誘い」であり、「待ち」の状態。 わたしの動きに対応しようとしている、と思われる。 つまり、わたしの出方次第。 なおさら迂闊には動けない。 だけど、このままでは二人とも動けずに終わってしまう。 やはり、銃火器を装備するべきだったんじゃ……。 そう思いながら、手にしたナイフを見る。 ここぞという時に、わたしの力になってくれた武器は、ナイフだった。 初勝利の時も、雪華さんとの対戦でも。 だから、銃火器がないことに納得は行かないけど、弱音は吐かない。 きっとマスターには考えあってのことだから。 ナイフでできることを考えて……わたしはつぶやいた。 「……マスター」 『なんだ?』 「正攻法で行きますけど……いいですか?」 『それでいい』 「はい!」 マスターが同じ考えでいてくれたことに嬉しくなる。 わたしは腰を低くして、再び全力で走り出す。 ◆ ティアは先ほどと同様、ランティスのまわりを縦横無尽に走り抜ける。 その動きは鋭さを増しているが、ランティスは微動だにしない。 表情さえもかわらない。 ティアはフェイントを混ぜ、左右に飛びちがい、ランティスを混乱させて隙を作ろうと動き回る。 だが動かない。 ランティスは彫像のように動かないままだ。 静と動の膠着。 それを破ったのはティアだ。 左から右へ、流れていくかと思った瞬間、一瞬にして方向を変える。 ティアならば刹那で届く距離。 ランティスのほぼ真後ろから、コンバットナイフを振り上げる。 そして、一歩。 跳ねるように刹那の距離を駆け、銀色の刃が閃めいた。 その刹那をついて、ランティスが動く。 振り向きざまに、右拳を振り上げつつ、バックナックル。 それは頭上へと伸び、ティアのナイフを根本から引っかけて、跳ね上げる。 しかし、ティアも止まらない。 腕ごと上体を跳ね上げられながらも、身体の勢いを利用して、右膝蹴りを送り込む。 ランティスは身体を回転させ、左の手でティアの膝を捌いた。 一瞬、空中で無防備になる。 ランティスの回転は止まらない。 膝を畳んでミドルに構えた脚を振るう。 狙いは、ティアのわき腹。 「あぐっ!」 バニーガール型神姫の小さな悲鳴。 意に関せず、彼女は動く。 畳んでいた膝を鋭い動きで伸ばす。 脚に乗っていたティアの身体を、思い切り弾き飛ばした。 「うああああぁっ!!」 ティアの身体は、宙を舞って地面に激突、横転する。 しかし、三回転もすると、回転力を起きあがる力に変え、あっという間に前屈みの姿勢で立ち上がった。 再びランティスと対峙する。 ランティスはゆっくりと構えをとりながら、冷たい目でティアを見据えていた。 ◆ 「なんで……ランティスは何であんな正確に、ティアの攻撃を捉えられるの!?」 涼子は驚愕していた。 あのティアの動きを、聴覚と勘で捉えるなんて、達人でも不可能だ。 だが、優しげで、いっそ暢気な口調が、彼女にあっさりと答えをもたらす。 「ああ……ランティスは聴覚でティアの動きを測定していたのですよ」 「高村さん……測定、ですか?」 「蓼科さん、でしたか……そう、彼女は視覚を閉ざした、のではなく、聴覚を最大限に利用して、ティアの動きを捉えようとしたのです。 つまり、ソナーです」 「ソナー……ですか?」 狐に摘まれたような顔の涼子に、高村は頷いた。 「ネット上で公開されている、武装神姫の運用プログラムには、耳をパッシブソナーのように運用するためのプログラムがあります。それを使ったのです。 さらに、電子頭脳の働きを聴覚に集中するために、視覚を閉ざして、十分なリソースを確保したのです。 もちろん、ランティスのように、ソナー化した聴覚に連動した動きをさせるには、熟練というデータの蓄積が必要ですけど」 フル装備の武装神姫であれば、わざわざそんな技を使うまでもない。 ソナーを装備すれば、素体の耳よりもよほど正確な測定結果が得られるし、装備の動作も簡単に連動させられる。 レーダーを積めば、全方位の視界を得ることも可能だ。 だから、ランティスのような素体運用は異端だし、まわりくどいやり方だった。 雪華は言う。 「マスター蓼科、神姫は人ではありません。人には不可能と思えることでも、神姫には工夫次第で可能となるのです。 人の常識にとらわれてはいけません。柔軟な思考こそが新たな可能性を切り開くのです」 涼子は改めて、大型ディスプレイに目を移す。 今バトルをしている二人の神姫は、そうした工夫を重ね、新たな可能性を突き詰めた神姫たちだ。 その結果、特別な装備がなくても、フル装備の武装神姫と渡り合える。 それは涼子が神姫マスターとして目指す境地であった。 ◆ 苦しそうに身体を折り曲げていたティアが、なんとか立ち上がる。 その様子を、ランティスは冷たい視線で見つめていた。 「所詮、貴様もその程度か……」 たとえクイーンの推挙であったとしても。 結局はこの塔で自分にかなう神姫などいないのだ。 「わたしは師匠の夢を託されている。その想いを背負って戦っている。 貴様のように、身体を売り、快楽を求めた神姫なぞに、負けるはずもない」 対峙するティアは、ひどく悲しそうな顔をしていた。 何が悲しい。 身体を売ることをよしとした、汚れた神姫のくせに。 走り回ることしか能のない神姫のくせに。 いや、彼女に限らない。 わたしと対戦する神姫は皆、ティアと変わらない。 ランティスの装備を見ては侮り、安易な武装で挑んでくる。 高火力によるエリア攻撃、高高度からのレーザー攻撃、手数とパワーに頼った格闘戦……。 うんざりだ。 どいつもこいつも、武装にばかり頼った、惰弱な神姫だ。 マスターとの絆を技に変えて挑んでくる神姫などいない。 ただ一人、『アーンヴァル・クイーン』雪華を除いては。 だからこそランティスは、雪華を敬愛する。 しかし、雪華は言う。 ランティスのバトルは卑しい、と。 そして、ティアの戦いこそ、自分が学ぶべきものだと。 だが、結局はこの程度。 塔の中では自分にかなう神姫などいようはずもない。 学ぶところなど、ありはしない。 今回ばかりは女王の見込み違いだろう。 「だが、我が女王の推挙なれば、せめて我が奥義を持って、終わりにしてやろう」 そう言うと、ランティスは両腕を軽く身体から離し、叫んだ。 「師匠、サイドボード展開! 装着、雷神甲!!」 ランティスの両腕が光に包まれる。 一瞬の後、ランティスの両腕は新たな手甲が装備されていた。 形は前のものとそう変わらない、無骨なデザイン。 その装甲の外側を青白い火花が走っている。 そして、ランティスの右手には、銀色の金属球が握られていた。 「受けるがいい……我が奥義……!」 金属球を両手で掴み、そのまま腰だめに構える。 ランティスの手甲が、青白い光を放ちはじめた。 □ 「遠野くん、君はレールガンを知っているか?」 唐突な鳴滝の問い。 戸惑いながらも俺は頷いた。 レールガンは、砲身となる二本のレールの間に、伝導体の砲弾を挟んで電流を流し、磁場を発生させて砲弾を加速、発射する武器である。 火薬を炸裂させて弾丸を発射する火器に比べ、弾丸が撃ち出される速度が高いという特徴がある。 「ランティスのあの籠手……雷神甲は強力な電力を発生する。 ランティスはあの籠手を使って、金属球をレールガンのごとく撃ち出す技を修得してる。 どの方向にも、意のままに撃てる。 破壊力は折り紙付きだ。なにしろ、重装甲で身を固めたムルメルティア・タイプを、サブアームごと破壊したほどだからな」 鳴滝の言葉に、ギャラリーがどよめく。 なるほど、塔で最強というのも合点がいった。 それほどの破壊力の飛び道具があれば、飛行タイプでも重装甲タイプでも相手にできるだろう。 これはランティスの要の技と言える。 俺は改めてディスプレイのランティスを見つめる。 雷神甲の表面に、青白い火花が走っている。 上下に合わせていた掌の間に金属球がのぞき、そこからも紫電が散っていた。 「いいのか、手の内を見せるようなことを言って」 「知っていたところで、ランティスのあれはかわせない。初速は通常の射撃武器の数倍だ。あれより速いのはレーザーくらいだろう」 不適に笑う鳴滝。 彼がそう言うなら、遠慮することもあるまい。 俺は耳にかかったワイヤレスヘッドセットを摘む。 「ティア、まだ走れるか?」 『はい、大丈夫、です』 「よし。それなら……」 俺はただ一言、指示を出す。 いつものように素直な返事が短く返ってきた。 ◆ 金属球を挟んだ両手に、電流が流れていく。 腰の位置においた両手の隙間からは、溢れ出た電流が、バチバチと音を立て放電している。 力が両手に溜まってくるのを感じる。 頃合いだ。 「くらえ、一撃必倒……」 ティアが動く様子はない。 バカにしてるのか。 だが、動いたところで、この技はかわせない。 ランティスが動いた。 大きく一歩踏み込む。 その動きに連動させて、身体の後ろから前へと、金属球を挟んだ両手をなめらかに伸ばす。 「雷迅弾! ハアアアアアァァァッ!!」 裂帛の気合い。 同時に両手が開かれ、必殺の金属球が射出された。 それはまさに雷光のごとき迅さ。 超速度の弾丸は、塔内部を一直線に駆け抜けた。 正面の壁に着弾。 そして爆発。 大音響と共に塔の壁が崩れ、爆煙が膨れ上がった。 雷迅弾の翔けた痕が地面に一直線に残り、その尋常ではない速度を物語る。 その直線上には何もない。 はずだった。 「な……! んだとぉ……っ!?」 腰を浮かせたのは鳴滝の方だった。 彼が見つめるプレイヤー用ディスプレイ。 雷迅弾の軌跡の上に影が見える。 「……なにをした……遠野!」 鳴滝は正面に座る対戦相手を見る。 そこに、表情を変えずに戦況を見つめる遠野を発見した。 ばかな。 これは奴の想定の範囲内なのか。 ランティスの正面。 雷迅弾の爆煙を背景に。 ティアは困ったような顔をして、立っていた。 後編へ> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1188.html
「トリッキーな攻撃で相手を翻弄させるルーナで」 「あら、アタシを選んでくれるのね。嬉しいかぎりだわ」 右肩で、しなやか身体を動かしながら喜ぶルーナ。 まぁ喜んでくれるのは嬉しい。 だけど他の三人は少し残念そうな感じだ。 『後で他の奴等と戦うから、その時にな』と言うとパア~と明る表情になる神姫達。 さて、そろそろ対戦するか。 装備…よし! 指示…よし! ステータス…よし! ルーナを筐体の中に入れ、残りの神姫達は俺の両肩で座ってルーナの観戦をする。 「ルーナ、頑張れよ!」 「勝ったらご褒美くださいね、ダーリン!」 「油断しないでしっかりね。頑張るのよ、ルーナ!」 「負けるじゃないよ!一番最初の闘いなんだからな!!」 「ルーナさんー!頑張ってください!!」 「まかせなさい」 ルーナは少し淫靡な笑顔を俺に見せ筐体の中へと入って行く。 気がつくと俺は両手で握り拳をつくっていた。 いつになく俺の心は興奮していたのだ。 何故だろう? 多分、誰かを応援している事によって熱くなっているのかもしれない。 それとルーナに勝ってほしい、という気持ちがある…かもなぁ。 俺は筐体の方に目を移すと中には空中を飛んでいる二人の武装神姫達が居た。 READY? 女性の電気信号がの声が鳴り響き、一気に筐体内の中に緊張が走る。 勿論、外に居る俺達もだ。 FIGHT! 闘いの幕があがった。 お互いの距離150メートルからスタートして、敵のストラーフが接近しルーナは…あれ、ニコニコと笑いながら戦闘態勢にもはいっていないでその場で静止し続けている。 おいおい、これじゃあどう見たってルーナの方が不利だ。 出遅れもして更に武器すら構えていない。 いったいどうゆう事だ? 何か秘策でもあるのだというのか? 「はああああぁぁぁぁーーーー!!!!」 敵のストラーフがDTリアユニットplusGA4アームに付いてるチーグルで攻撃しようとした。 そこでルーナがクスッと笑い、背中に隠していたクライモアを取り出した。 ガギン! チーグルとクライモアがぶつかって鈍い音が聞こえる。 ルーナの奴、何時の間にあんな武器を隠し持っていたんだ? まぁ確かに装備させておいたけど…。 「残念でしたね~。そんな安直な攻撃では、あたしに届きませんよ」 ニッコリ笑うルーナ。 余裕綽々みたいだ。 あの自信はいったい何処から湧き出てくるんだろう。 「チッ!」 一度、ルーナから離れる敵のストラーフ。 ルーナの奴はクスクスと笑いながら追撃しない。 何故なんだろう、絶好の攻撃のチャンスだったのに。 「次はちゃんと攻撃してくださいね」 「クッ!バカにしてー!!このーーーー!!!!」 シュラム・RvGNDランチャーを準備しルーナに狙いを定める。 その間のルーナは…。 「あら、物騒な武器ですわね」 笑みを浮べながらビルの背にして移動する。 ちょっと、オカシイだろ! 普通、回避行動をしたり接近したりビルの背後に隠れたりするだろうー! なのに何故逃げづらい場所に行くのかな~。 訳解らん。 「クラエー!」 「当たればの話ですけど」 ドンー! シュラム・RvGNDランチャーから発射された弾がルーナを襲う。 でもルーナは避けようとする素振すらしない。 このままじゃヤバイ! 「避けろー!」 ドカーン! 俺が叫んだ直後、ルーナの背後にあったビルが爆発する。 煙がモクモクと噴出しルーナが何処にいるか解らない。 もしかしてシュラム・RvGNDランチャーの弾に命中し吹き飛び、ビルに当たったんじゃ…。 「あらあら。駄目でしたね~」 「えっ!?」 突如ルーナの声が聞こえた。 でも姿が見えない。 煙の中にいるのか? あっ! ルーナの奴、いつの間にか敵のストラーフの背後に居て右腕を回し、短剣のグリーフエングレイバーをストラーフの首に突きつけている! 何時の間にあんな所に居たんだ? まるで忍者みたいだ。 敵のストラーフは急所を突きつけられているので身動きが取れない。 寧ろ動いたらルーナに攻撃されると思っているのかもしれない。 「もう一度チャンスをあげます。次の攻撃で、あたしに命中しなかったら…貴女は負けます。いいですか?」 そう言ってルーナはストラーフから離れる。 また絶好のチャンスだったのに攻撃もせずに…だ。 完璧に相手の事をおちょくっているな、あれは。 お~お~ぉ、敵のストラーフは顔を真っ赤にして怒っているよ。 こえ~コエ~。 にしてもルーナの奴はなんであんなにも闘い慣れているんだ? 今日が初めてのバトルだというのに…。 「さぁ…遠慮なく攻撃してくださいね♪」 ニッコリと笑い、どっから見ても無防備に見えるポーズをする。 敵に対して火に油を注ぐような行為だ。 挑発、と言えば簡単だろう。 「このー!」 敵のストラーフはカンカンに怒りながらモデルPHCハンドガン・ヴズルイフを乱射した。 『フゥ…』と溜息をつき、顔を左右に動かすルーナ。 呆れてるようにも見える…だがすぐに真面目な顔つきになり。 「…!」 ん!? 消えた!? ルーナが敵のストラーフに向かって突っ込もうとする動作が視認出来たがその瞬間、オバケのように消えてしまった。 勿論、乱射されたモデルPHCハンドガン・ヴズルイフの弾はルーナに当たっていない。 そりゃそうだ。 なんたって標的がいないのだから。 「どこ!?どこに言ったの!」 「…ここよ」 声がした方に顔を向けるストラーフ。 向いた方向…ストラーフの真上だった! しかも空中で逆立ちしていた、逆立ちというよりもただ単に上下逆に飛んでるようなものだ。 「残念でした♪機会があったらまた会いましょう」 ルーナが言い終わると何故か敵のストラーフは地上に転落していき、ゲーム終了した。 筺体に付いてるコンソールを見るとストラーフのLPは無くなっていた。 ルーナが右手に持っている武器を見ると短剣のグリーフエングレイバーを持っていた、逆手持ちで。 目には見えない早業でストラーフをグリーフエングレイバーで切り刻んだのか? まさかな…いや、やっぱりそのまさかもしれない。 後で少し探ってみるか。 俺の方の筐体に付いてるスピーカーから『WIN』と女性の電気信号の声が鳴り響く。 多分、相手の方では『LOSE』と言われてるだろう。 そりゃそうだ。 勝ちがあれば負けもある。 二つに一つ。 「ダーリン、勝ちましたよ。ご褒美くださいね♪」 筐体の中で俺の事を見ながら喜ぶルーナ。 俺も自分の神姫が勝った事が嬉しくて微笑む。 両肩にいるアンジェラス達も喜びはしゃいでいる。 そうか…。 これが武装神姫の楽しみ方か。 確かにこれは楽しい。 おっと、ルーナを筐体から出さないといけないなぁ。 俺は筐体の神姫の出入り口の中に手を突っ込みルーナを待つ。 数秒後、ルーナは優雅な足取りで俺の右手の手の平に乗った。 そのまま俺は右手を自分の目線と同じぐらい高さまで持っていきルーナを見る。 「お前…何であんなに余裕で勝てたんだ?今日が初めてのバトルだろ?」 「そうですよ」 屈託のない笑顔で答えるルーナ。 最初は何か隠してるようにも思えたが…気のせいかぁ。 「それより早く~。ご褒美頂戴♪」 「あ、そうだったな。っと言ってもなー。ルーナはどんなご褒美がいいんだ?」 「そうですね~…あたしのオデコにキスしてください」 「ナッ!?キスだと!?!?」 「駄目ですか~?」 どうしよー。 キスかぁー…。 う~ん、ここでもしルーナにキスしなかったら…。 ☆ 「オデコにキスはちょっと…」 「そうですか。じゃあ、あたしからしますねー。濃厚なキスを…ね♪」 「や、やめろ!こんな人が沢山いるところで!!」 「もう遅いです~!ブチュー~」 「ギャーーーー!!!!」 ★ …ここはキスすべきだろう。 嫌な予感しすぎて背筋がゾッとするからなぁ。 「解ったよ。キ、キスしてやるから目を閉じろ」 「わーい。さぁっ!目を閉じましたから早く!!」 あぁ~、本当にキスをするハメになっちまったぜ。 ここは我慢だ、俺。 羞恥心を無くせ! ルーナをオデコに俺の唇を近づけさせる。 神姫だからオデコの広さ凄く狭い。 下唇が触れるぐらいが丁度いいかもしれない。 …チュッ 「…ンァ」 よし! 狙い通りに下唇をルーナのオデコにキスした。 キスした瞬間を見た他の神姫達が。 「いいなぁ…。ご主人様、ご主人様、次の試合は私を指名してください。絶対勝ちますから!」 「あー!いいなぁ~ルーナの奴~。よし!!次の試合はボクが出る!!!」 「あの…私のバトルは最後でもいいので…もし勝ったら、お兄ちゃんのご褒美くれますか?」 両肩で何やらルーナに嫉妬しているように見える三人の神姫達。 そんなにご褒美が欲しいのか? まぁ今日はトーブン、ここにいるから一応全員バトルさせてやるか。 すぐさま唇を離すとルーナが不満そうな顔しながら。 「あれで終わりですか?キスした瞬間、舌で舐め回してもよかったですのに」 「俺はそんな事しね~よ。つか、舐め回してって…」 「ダーリンの意気地なし。でも一応、キスしてくれたから許してあげます。気持ちよかったですし」 「許すもなにもないだろ。だぁー疲れた」 本当に疲れた。 体力が、というよりも精神的に…。 まぁいいか…、ルーナが気持ち良くなるのなら俺はなにも文句は言わん それにキスした時のルーナは可愛いかったし。 またキスしたくなるような表情だった。 ここでまた再びルーナのオデコにキスをすると乗っている三人に何されるか解らないのでキスはお預け。 ルーナを両手から右肩に移動させ、俺は次の筐体に向かった。 闘いはまだ始まったばかりだ。 「さぁ行くぞ!俺達のバトルロンドの幕開けだー!!」 こうして俺達のバトルロンドがスタートした。 そしてこの日からルーナの二つ名が出来た。 名は『刹那を操る者』…。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2653.html
「まだ終わりませんよ。姉さん!」 光の刃が生まれたぺネトレート・烈「ぺネトレートセイバー」を携え姉さんを見据える。 痛みなんか関係ない。全力をもって姉さんと戦う 姉さんは歩みを止め、こちらを感心そうに見る。 「……ほう。まだ立ち上がれるか。そしてそれはオリジナルとみえる。そんな武装を出したぐらいで勝てるのかな」 「やってみなくてはわかりません」 私はリアパーツ、バリスティックブレイズをパージする。 もうこれは使い物にならない。ここからは真っ向からのぶつかり合い。 姉さんも大剣を正眼に構えて、迎え撃つつもりだ。 「はぁっ!」 私は姉さんの元まで疾走し、ぺネトレートセイバーを構えて右横から薙ぐ。 それはもちろん大剣で防がれる。 そうなるのはわかってた。 姉さんは私が今度は右の剣で攻撃した後は左の剣で突きに来ると思ってる。 姉妹だからわかる。断言してもいい。 だけど、それは姉さんの驕り。そしてそれは私への油断。 「こんどはそちらが……甘いです!!」 右の剣が防がれ、捌かれた勢いのまま一歩踏み込む。私は上半身を捻り右足を軸にして、回転。 左足で後ろ回し蹴りを姉さんのわき腹に放つ。 姉さんは私の予想通りに大剣は突きを備えてて、腹部は隙だらけだった。 「……くぁ!?」 直撃を腹にもらい、おもわず苦痛の声を上げる姉さん。 それでもまだ終わらない。 わき腹に当てた足を下ろし、今度は本気で左手のぺネトレートセイバーでフェンシングのように刺しにいく。 もちろん衝撃を与えたその腹部にだ。 だが、それは姉さんの左腕で真横から強く払われた。 それによって肘から先の腕周りが半分切られ、左腕はもう使えなくなったかもしれない。 ぺネトレートセイバーの鋭い切れ味を無視した捨て身の捌き。 それでお互い、間合いを空ける。 私のダメージよりか少ないが、左腕を使えなくさせた。 これで姉さんにも深い傷を与えることができた。 「……つぅ……これほどの深手を負うのは久しぶりだ。……強くなったんだな」 「私は逃げた先で大切な人に出会いました。そのおかげで姉さんたちの前に舞い戻って来れた。これが私の……いえ、私たちの強さの源です」 「……そうか、当然だな。こちらはその大切な人にはなれなかったわけだから。……“シオン”」 「わ、私の名前を……」 初めて姉さんに名前を呼ばれた。 認めてもらえて、今は敵同士なのになぜか嬉しくなってしまった。 「……全力でいくぞ」 「はい。こちらもそのつもりです!」 私と姉さん、両者身構える。 こちらはナックルから進化した双剣を。あちらは片手に大剣を持って。 姉さんは片手でも大剣を軽々と扱えることができる。ここからも油断は一切できない。 好敵手と認めてもらった。これでもう姉さんも私への驕りはないだろう。 そして、どちらからともなくピクリと動き、駆け出す。 「はぁっ!」 「……つぁっ!」 姉さんは片手上段から振り下ろし。 私はぺネトレートセイバーを交差させて、それを防ぐ。 数分は致命傷にならないような傷が全身に負うほどの斬り合いが続く。 袈裟斬り、逆袈裟、振り下ろし、振り上げ、双剣での連続の斬撃。 数え切れないほどの何度目かの斬り合いでガンッと轟かせ、剣が交りあった箇所から火花が飛び散る。 「くぅっっ!」 「……ぐぅっっ!」 同じように声を出し、二人とも歯を食い縛らせている。 こちらは両手。姉さんは片手なのに鍔迫り合いが拮抗している。 どれだけ、姉さんは馬鹿力なのか。 場違いにも私は頭の中でほとほと呆れてくる。 そして、私たち姉妹はまた同時に、鍔迫り合い状態からどちらも剣を離した。 一旦離れ、姉さんは大剣を横に倒して、そこから踏み出し思いっきり薙いでくる。 私は迎え打つ為にぺネトレートセイバーを重ね合わせ、大剣自体を真っ二つにする気で、こちらも思いっきり叩き斬る態勢で。 「……これで、終われぇぇーー!!」 「根性ォ!!!!」 鋭い剣閃の音の後、重い打撃のような鈍い音に変わった。 そのまた数瞬後。 私たちのいる頭上でヒュンヒュンと壊れたプロペラのような音が続く。 「……相打ちか」 「そうですね」 二振りの剣と赤い大きな大剣が地面に刺さった。 ぺネトレートの光刃はふっと消えてナックルに戻って落ちた。 そして、私たちはどちらからともなく倒れる。 動かない。動けない。 姉さんも私も。 もう体が…………。 ―――― 「シオン! 起きろ。目を開けろ」 僕が命令も出せず茫然と見ていて、もう10分ぐらいは経ったか。 気付いたら二人は倒れていた。 シオンはあの危機的状況から、ぺネトレートクロー・烈の力を発現させて、イスカを追い込んだ。 でも、どちらも力を使い果たしたのか、ピクリとも動かない。 「立って! シオン!」 「イスカ、立てー!」 「シオン、負けるなー!」「どちらも起きてくれー!」 見渡せばいつの間にか、周りからは熱いバトルを魅せられて、ちらほらと観客から応援の声が交っていた。 ほら、こんなにもの人たちが声を出しているんだから、聞こえているなら立ってくれ。 ……シオン! 筐体の画面を見れば起きあがる神姫の姿が。 観客からは、オオォッ! と驚きの声が上がっている。 声から察するにどちらかが起き上がったみたいだ。 それはどっちだ。どっちなんだ。 目が涙で濡れていて前がよく見えない。 クソッ。 拭っても拭っても後から出てくる。 確認しなきゃいけないのに。 「はい、ハンカチ」 「あ、どうも」 と、横から優しく声をかけられて手にハンカチを持たせてくれた。 それで目元を拭う。 「すいません。お見苦しいところを……て……、あ」 ハンカチを貸してくれた優しい声の主は宮本さんだった。 僕は突然気恥しくなった。 ハンカチは洗ってから返そうと思い、宮本さんにそう伝えようとするが。 「いいわよ、それあげる。言い方がものすごく悪いけど残念賞ってところね……あれ」 「え」 宮本さんが促した目線の先。 見えるようになった僕が筐体画面を見つめれば道の真ん中には――肩で呼吸をしているイスカが立ちあがっていた。 そして傍らの倒れているシオンはモザイク状になって消えていった。 遅れて聞こえるジャッジの機械音声。 『WINNER イスカ』 ―――― 「すいません、螢斗さん。負けてしまいました。……あはは」 「シオン……」 シオンは笑いながらもそう言った。 でもそれは仮初めの笑顔。 僕にはそれがわかってる。 「よく頑張った。シオンは頑張ったんだから。無理はしないで。……こういう時はおもいっきり泣いた方がいいよ」 シオンの頭を撫でる。 次第にシオンは俯いてきて。 「……だって私は……螢斗さんの武装……神姫なんですから……負けたぐらいで泣くわけ…………ヒック……う……うああああーーーあーーーー」 「よしよし……」 泣きじゃくって大粒の涙を流し張り裂けそうなほどの声を上げるシオン。 僕はそれを、シオンを子どもをあやすように、背中に指を優しく当て続ける。 ついでに僕も涙を流しながら。 神姫の尋常じゃない程の泣き声しか聞こえなくなったゲームセンター。 周りにいた人たちもこの空気に騒ぐ気はなくなったのか、不気味なほどの静けさが店内を包み込んでいた。 宮本さんはこの空気の中を普通に歩きだし、自分のついていたブースのアクセスポッドから、イスカを連れ出して持ってきた。 「ほら、イスカ」 「…………」 宮本さんは涙をこぼしているシオンの前にイスカを置く。 バイザーを外した真っ赤な瞳をさらけ出したイスカだ。 それでも無表情のままのイスカ。 「シオン、こっちも」 「グス……はい……」 シオンはなんとか目から溢れ出る涙を留まらせ、手の甲ですべて拭ってから、イスカの前へ歩み出る。 そして見つめ合うシオンとイスカ。 「……ん」 突然、イスカはぶっきらぼうに音だけの声を出し右腕を動かした。 それは不器用そうに右手を軽く開きシオンに差し出している。 これは握手でいいんだよね? 僕はそう思った。しかし、それを見たシオンは。 「ウゥ……お姉ぇちゃ~~ん……うわぁああああああああ!」 「……おい、ちょっと!?」 感極まったシオンは引っ込ませた涙腺をまたもや崩壊させて、握手のポーズを無視し、イスカの胸に抱きつき号泣をする。 それで、イスカは無表情な顔を見たことも無いほど驚き戸惑った顔に変化させた。 抱きつかれ固まっていたイスカだが、やがてシオンの頭に手をやった。 「……ふ、まったく、泣き虫な妹め」 「ぁああああああああ……お姉ちゃん、お姉ちゃーん!」 毒づきながらも、シオンは姉らしい穏やかな笑みを浮かべて、シオンを抱きしめ返した。 両腕で優しく。 バトルは勝てはしなかったけど、イスカのあの笑顔を見てたら、姉妹でいがみ合う事はもうないなと僕は思えた。 こうして永遠とも思われた、戦えない、いや戦えなかった武装神姫シオンの。 家族の絆を取り戻す戦いは終わったんだ。 長かった全てが終わった。 前へ 最後へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1776.html
{イリーガル・レプリカ迎撃指令…シャドウ・アンジェラス編} 「諸君!諸君等の多大な勇気と努力によって、イリーガル・レプリカの数は着々と減っている!!これも諸君等のおかげである!!!」 オオオオォォォォーーーー!!!! 「…ケッ!調子のいい奴等だぜ」 俺は壁に背を預けながら煙草を吸う。 肩にはいつも通りにアンジェラス達がいる。 現在いる場所はアンダーグラウンドの神姫センターである。 アンダーグラウンドの神姫センターでイベントがあるという情報を入手して来て見たら、この有様だ。 少し前に、この街でイリーガル・レプリカの出現が多数目撃され死人もでたという事件。 その被害は拡大していく一方でアンダーグラウンドの住人は困りに困り果てたという。 そこでイリーガルの神姫にはアンダーグラウンドの神姫で対決という話になり、討伐隊をエントリーする事になった。 私的には『どうでもいい』と思っていたが、オヤッさんの商売とかに支障がでたり、その他にも色々と理由があったので仕方なく参加した訳だ。 そしてこのイリーガル・レプリカを多く撃墜した者には賞金が出るという。 金の話が出ると、いきり立った馬鹿どもが我先にとエントリーする光景には正直馬鹿馬鹿しいと思った。 でもエントリーした俺も少しその馬鹿どもの気持が解る。 誰だって金は欲しい。 特にこの街は金の流通が激しいからな。 金の亡者になる奴は多い。 と、前の話はここまでぐらいだったよな。 そろそろ今の…現在の状況に戻ろうか。 イベントの話までしたっけ? まぁ簡単で簡潔に言うと神姫センターを貸しきってパーティーを行っている。 イリーガル・レプリカの神姫をブッ壊しまくって、この街ではすっかり数が減ってしまった。 俺等にとっては良い事なので調子こいてる奴が多い。 そこで浮かれている他のアンダーグラウンドの住人のオーナー達がこんな馬鹿げた宴をしてる訳だ。 ほんでもって主催者はこの前、電光掲示板で演説をした男の声の野郎だった。 外見から見て50歳前後かな。 大方、この神姫センターの店長だろうよ。 て、それは貸しきると言えるのか? 結果的にどうでもいい。 まぁ~そんな訳だ。 まったくもってどうでもいいイベントに参加しちまったもんだぜ。 「よ~閃鎖。浮かない顔してどうした?」 ワイングラスを片手に持って来て俺に声を掛ける男。 視線を会場からずらして見ると。 「オヤッさんか。別に、くだらないイベントに参加しちまったな、と後悔してるだけだ」 「ハハハッ!お前らしい感想だな!!」 オヤッさんはワイングラスをグビッと一気飲みして、ワイングラスをバイトをしてるボーイに渡す。 「にしても閃鎖達のおかげで俺の店も大繁盛したよ。武器を買いにくるお客さんが激増したもんだ。イリーガルの神姫に感謝だな!」 「酔ってんのか?でもまぁ、商人としては嬉しいだろうよ」 そーいえばここのところアンダーグラウンドの武装神姫関係の違法改造武器屋が24時間体制で店を開けていたのは商売繁盛のためか。 なるほどな、納得いくスジだ。 「つか、なんでここにオヤッさんがいるんだよ」 「あぁ~、そういえば閃鎖に教えてなかったけ?俺、昔は武装神姫のアンダーグラウンドのオーナーだったんだよ」 「ハッ!?オヤッさんがオーナーだと!?!?初耳だ」 「だから今初めて教えたんだ」 …マジかよ。 オヤッさんが武装神姫のオーナーだったとは…俺の神姫達も吃驚してるし。 でも今はオーナーを辞めたみたいな口ぶりだったな、昔と言ったもんな。 「ほら。閃鎖に挨拶しない」 「「は~い」」 んぅ? 声はするけど姿が見えない。 いったい何処にいるんだ。 「メイルで~す♪」 「テイルで~す♪」 声がしたん瞬間、オヤッさんと俺の間に出現した二体の神姫、サンタ型ツガルだった。 しかも片方はリペイントバージョンだ。 どうやら姿が見えなかったのは光学迷彩を装備してるからだと思う。 赤と青のカラーリングが少しカッコイイと思った。 で~さぁ。 「どっちがメイルで、どっちがテイル?」 「メイルで~す♪」 「テイルで~す♪」 「だ~もぉ!一緒に言うな!!」 あ~もう、いらいらイライラ苛々する! ただでさぇ下らないイベントに参加して、苛々してるのに更に俺をイラつかせる。 「ハハハッ!閃鎖の奴、早速遊ばれているな。ハハハッ!!」 「笑うな!こうなればオヤッさんに直接訊いた方が早い。で、どっちがメイルでどっちがテイルだ?」 「今は赤がメイルで青がテイルだ」 「へぇ~…ちょっと待て。『今は』つったか?」 「そう言ったが?たまに武装交換し合ってチョッカイだしてくるんだよ。まったく困った子達だ。ハハハッ!」 「…笑い事じゃないような気がする。それと、やっぱ酔ってるだろ」 にしてもこのサンタ型ツガルには神姫侵食に犯されていないみたいだ。 オヤッさんの商売上、違法改造武器を使ってとっくのとうに武装神姫を神姫侵食付けにするかも、て思ったけど…。 どうやら違うみたいだな。 「確かに俺は商売上違法改造武器を販売してるけど、俺の可愛い神姫達に使わせる訳ないじゃん」 「「そうそう、アタシ達はニー様に大事にされてきたんだから♪」」 「…頼むから一緒に言うな」 でもまぁ何にせよ、俺はオヤッさんの過去を知らないからどうこう言える立場じゃないし、別にどうでもいい事だ。 「今度、俺の過去の話をしてやるよ。閃鎖だけに教えてやる」 「そいつはど~も」 短くなった煙草を吸殻入れに入れ、そしてまた新しく箱から煙草を取り出しジッポで火を付け吸う。 苛々してるから煙草を吸う数が多い。 今日はもう八本も吸ってる。 俺は本来一日二、三本ぐらいしか吸わない。 だけど、苛々してる時とか仕事してる時に煙草の数が多くなる。 主に煙草は気分転換なものだ。 「もう帰りたいか?俺は五月蝿い宴に飽きたし苛々が治まらん。ブッチャケ帰りたい」 「ご主人様に任せます」 「ボクは帰りたいよ~」 「流石にこの場は常識がなってませんわ」 「うぅ~、少し回りが五月蝿いですぅ」 ふむ、どうやら三人は帰りたいみたいだな。 アンジェラスはいつも通りに俺の意見に賛同するような形。 もうちょっと自分の意見を言ってもいいのに。 …煙草の時はムカつく程意見を通そうとするくせによぉ。 「そんじゃオヤッさん。俺はこれで帰らせてもらう」 「おいおい、もうちょっといようぜ。どうせここにある食い物は全部タダなんだからよ」 「ここに居ること事態イヤなんだ。だから帰らせて―――」 ドカーン! 突如の爆発。 俺はバランスを崩し右足の膝を地面つかせ、両手で地面を掴みバランスを保つ。 そして何処で爆発したのか周りを見渡す。 すると天井にドデカイ穴が開いていて、その穴から続々と武装神姫達が入ってくる。 まさか…あれは全部イリーガル・レプリカなのか!? 「うわー!?」 「た、助けてくれぇ~!」 「応戦しろ!それと退路を確保するんだ!」 神姫センターの場を借りて宴の会場と化していた場所が、一気に悲鳴と銃声と剣がぶつかり合う金属音が鳴り響く、この状況を言うならば戦争状態。 どうしてこんな事になっちまったんだ! それとどうしてイリーガル・レプリカ達は今日のイベントで討伐隊の俺等が集まると知っていたんだ! 「閃鎖!大丈夫か!?」 オヤッさんの声がした。 けど天井の壁が崩れてオヤッさんの姿が見えない。 「オヤッさんか!?こっちは大丈夫だ!」 「よかった…スマナイがこっちまで来てくれないか。頑張ってイリーガルの神姫を追い払っているんだが数が多すぎる!」 「解った!今すぐそっちに行く!!」 俺は立ち上がり、自分の神姫達を確認する。 …よし! 全員ちゃんと居る。 「ご主人様!これはいったい!?」 「解らん。だが、壱つ言える事は『奴等は俺等襲っている』という事だ」 「どうして今頃になって…数も減っていたはず」 真剣な顔つきで考え込むアンジェラス。 今はそんな事どうでもいい。 あの天井の瓦礫で塞がるような壁の向こうでオヤッさんが闘っているんだ! 早く助けないと! 「そこら辺の情報は後回し。クリナーレ!パルカ!!あの瓦礫の壁をブチ壊せ!!!」 「ネメシス、来い!」 「ライフフォース、召喚!」 フル装備状態で自分専用の武器を召喚するクリナーレとパルカ。 行動が早くて助かる。 今までに比べて随分とレベルが上がったもんだ。 「光闇矢翼、展開!」 <ヴェーニア> ジャララララ!!!! 「穿ツ!」 <フォデレ> シュババババ!!!! 銀の矢が瓦礫の壁に長方形の線を形とるように突き刺ささていき、一本一本が突き刺さる度に瓦礫の壁にヒビが入っていく。 そして全体的に長方形の形が出来ると。 「ウォオリャーーーー!!!!」 <ソニックストライク!> バゴン! クリナーレが長方形の中央部分をネメシスでブッ叩いた。 すると衝撃でヒビが入っていた瓦礫の壁がガラガラ、と音を出しながら完全に崩れ落ちていくではないか。 しかもパルカが撃った長方形の部分だけしか崩れてない。 大きさ的に俺が通れるぐらいの長方形の穴だ。 「アニキ!これで通れるぜ!!」 「早くメイルさんとテイルさんを助けましょう!」 「サンキュー!」 俺はすぐさま穴の中に入り辺りを見回すとそこは悲惨な状態だった。 沢山のイリーガル・レプリカ残骸と人間の死体。 瓦礫と燃え上がる火。 血と硝煙の臭いが鼻につく。 さっきまで馬鹿騒ぎしていた宴が一気に地獄と化していた。 「ダーリン、危ない!」 「ッ!?」 ズバッ! ルーナが後方で叫ぶと同時に何か斬ったような音が聞こえた。 すぐに振り向くと、ルーナが俺を襲ってきたイリーガルの騎士型の身体に沙羅曼蛇を突き刺さしていたのだ。 「永遠の眠りにつきなさい!」 ルーナはそのまま沙羅曼蛇を縦に斬り上げると、騎士型の身体が真っ二つに切り裂かれた。 たった一振りの剣でそこまで強くなっていたとは…いや、元々ルーナはかなり強い。 あのぐらいの事は雑作ないかもしれない。 「行くよグラディウス!ツインレーザー!!」 <TWIN LASER> バババババシューーーー!!!! 違う方向ではアンジェラスが先行しながら攻撃していく。 しかもオプションを四つも召喚しながら撃っていやがる。 オプション一つ制御するのにも大変なのに。 そしてアンジェラスのバックアップをするために後方でクリナーレが頑張っている。 「ダーリン!気をつけないと駄目ですわ!!ここはもう敵が沢山いる戦場ですのよ!!!」 「す、すまねぇ」 「お兄ちゃん。今、アンジェラス姉さんと姉さんが先攻しながらメイルさん達の居る方向に向かってるの!」 「マジで?でもなぜ解る??」 「さっきルーナ姉さんがお兄ちゃんを守ってる時に、アンジェラス姉さんがホーンスナイパーライフルの銃声が聞こえたらしいの、だから早く行こう!」 「待て!敵の銃声かもしれないじゃないか!!信用できるのか?」 「今この状況で信用も何も無いよお兄ちゃん!今出来る事をやろう!!」 「!? そうだな、俺とした事がパニックてたかもな。行くぞ!」 俺はすぐさま走り、アンジェラスとクリナーレ達がいる場所へ向かう。 ルーナとパルカは俺の後方で敵が襲ってくるか確認しながら飛んでくる。 わざわざ確認してくれのは嬉しい、なんせ俺の身を守るために警戒してくれてるのだから。 さて、アンジェラスが聞こえた銃声は信用できるのか? 走り続けて角を右に曲がるとそこに居たのは、右腕を左手で押さえながら壁に背もたれて座っているオヤッさんが居た! アンジェラスの勘は当たったみたいだ。 流石というべきか、アンジェラスらしいというか…。 「オヤッさん!大丈夫か?」 「スマナイなぁ…閃鎖。ドジって敵の攻撃をクらってこのざまだ」 苦い顔しながら言うオヤッさん。 オヤッさんに近づき傷を確認する。 …右腕を負傷していやがる。 しかも結構血が出る量がはんぱない、かなり傷は深いようだ。 このままだと出血大量で死んじまう! 俺はドクドクと出てくる血を止血するために自分の上着の左腕部分を引きちぎり、引きちぎった服をタオルのように伸ばしオヤッさん傷口を塞ぐ。 「イテッ!もうちょっと優しくできないのか?」 「強く縛らないと止血できないだろうが!」 「…すまない、迷惑をかけちまった。今度その服を弁償させてくれ」 「謝るのなら今この場から脱出してからだ!」 俺は立ち上がり今この場の現状を確認する。 オヤッさんの神姫達と俺の神姫達がお互いカバーしながらイリーガルの神姫達と交戦していた。 けどイリーガルの神姫の数が多い! このままじゃジリ貧だ。 いくらんなでも敵の多すぎるぞ! 何十、いや何百体この神姫センターに襲撃してきたんていうだよ! 「出口は!?出口はないのか!」 キョロキョロと辺り見回す。 すると。 「あ、あんな所に!」 ここから役10メートル先に壁に大きく穴が開いた場所を発見した。 でもそこに行くためには、あの大量のイリーガルの神姫達に突っ込まなければいけない。 もしそんな事をすれば、いくら俺等の六人の神姫達が頑張ったとしても敵の猛攻撃で蜂の巣されるのがオチだ…。 それに今俺が通ってきた道もイリーガルの神姫達が大量に来た。 畜生、八方塞がりというのはこの事か! 「死ねー!」 「ッ!?」 突如、俺に突進してきたイリーガルの悪魔型ストラーフ。 アングルブレードを振りかざし俺に攻撃してきた! ザシュ! ブシャー! 「な、なに!?」 条件反射で俺は左腕で敵からの攻撃を防御した。 切り裂かれた腕から赤い血が噴水のように出る。 「このっ!人形風情が!!」 俺は右手でストラーフを下半身を掴み、そして上半身を左手で掴む。 そして。 ボギャ! バキバキ! 「ギャアアアアァァァァ!!!!」 背骨が折れるように真っ二つに折り曲げてやった。 けど左手も使った事により更に血が出てしまった。 すぐさま左腕に突き刺さったままのアングルブレードを引き抜くと更に血が出てくる。 「ちとマズイなぁ。この状況は」 ビリビリ 口で上着の右腕部分を引きちぎり、右手を上手く使って負傷した左腕を止血する。 この悪魔型ストラーフが攻撃することが出来たという事は、俺とオヤッさんの神姫達は相当疲れてきてやがる。 敵を倒しきれないのだ。 それもそのはず。 こんなにも大量なイリーガルの神姫達を相手にしてるのだから。 …一か八か! 「俺も参戦させてもらうぞ!」 「ご主人様!?駄目です!ご主人様は下がっていてください!!」 「そうも言ってらんねーだろうが!大丈夫、元不良の俺だ。人間の喧嘩がどのようなモノかこいつ等に教えてやる!!」 「でも!」 「アンジェラス、俺を信じろ!」 「!…解りました!でも無理はしないでくださいよ!!」 「お前もなー!」 オヤッさんを守るように陣形を作りイリーガルの神姫達と闘う。 俺が参戦した事によって少しは楽になればいいのだが…。 「サイクロンレーザー!」 <CYCLONE LASER> ビーーーー!!!! 「くたばれーーーー!!!!」 <グラビティーフォトンブレイク!> ズガーン!!!! 「遅いわ!」 <神機妙算> ズバズバ!!!! 「蒔く!」 <セミナーレ> ザシュザシュ!!!! 「ニー様は絶対死なせない!ホーリィナイト・ミサ!!」 バンバンバンバン!!!! 「そうよ!いつまでも一緒なんだから!!ハイパーエレクトロマグネティックランチャー!!!」 バキューンバキューン!!!! 六人の神姫達はそれぞれ攻撃し、敵をこっちまで来させないようにする。 けど、強攻突破してくる敵の数が多いため撃ち落としても斬り裂き落としても、いまいち効果が得られない。 後何体いるてんだよ! 「破ー!」 バキ! 拳で殴り落としたり足で蹴り落とすが、神姫自体が身体が小さいため、なかなかヒットさせるのが困難。 それに左腕を使い過ぎると傷口が広がってしまうため、激しい動きが出来ない。 「…おっと」 ヤベッ!? 今クラッてきやがった…血が出すぎたか? 視界も少し霞んできたし、そろそろ限界か? 「アッ!」 フと、アンジェラスの姿が視界に入った。 アンジェラスの奴は次の攻撃をするために攻撃準備していたが、敵はその隙を狙って十数体のイリーガルの神姫が剣系の武器で攻撃しようしていた。 クッ、あの状態じゃアンジェラスは反撃できない。 どうすれば!? …ハハッ方法ならあるじゃねーか。 「間に合えー!」 俺は力を振り絞り全力疾走する。 「ご主人様!?」 「ウオォォォォ!!!!」 なんとかアンジェラスの場所まで間に合う事が出来た。 そしてすかさず俺は両手でアンジェラスを抱え込むかのようにして守る。 そして。 ドグシュ! ザシュ! ブシャ! バシュ! ズシャッ! 「グハッ!」 俺の背中に何本もの剣が突き刺さる。 「アニキ!」 「ダーリン!」 「お兄ちゃん!」 激痛が走りジワジワと血が吹き出てのが解る。 …ヤバッ。 肺や心臓にも剣が達したかもしれない…。 足に力が入ら…な…い。 ドシャ 俺はそのまま剣が刺さったまま仰向けで倒れる。 そして最後の力を使って両手の中にいるアンジェラスが傷つかないようにカバーする。 …ハハハッ…俺の最後はこんな形で終るのかよ…。 意外とあっけないものだな。 でも悔いが無いように感じるのは何故だろうか? …あっそーか。 あいつ等と…アンジェラス達一緒に楽しく過ごせたからだ。 なんとなくそう思う。 俺の生き様も案外、良い終わりかたかもな。 「ご、ご主人様!?その傷は!?!?」 お、やっと俺の手から出れたか。 しかも俺の背中に突き刺さってる剣を見て絶句してるようだ。 おいおい、そんな顔するなよ。 最後ぐらいお前の笑った顔が見たいぜ…、と言ってもこんな状況じゃあ無理な注文か。 「ご主人様!ご主人様!!」 「…よう…大丈…夫か?」 俺の手から出てきて、グラディウスを放り投げ走ってくるアンジェラス。 そして俺の顔を両手で触る。 あぁー、なんとも…暖かく柔らかい手なんだ。 「私は大丈夫です!それよりご主人様が…!」 「俺か?多分…俺はここで…ゲームオーバー…みたいだ」 「!? そんな事言わないでください!!まだ間に合います!!!」 「何が…間に合う…て、言うんだ?」 「必ず救助が来ます!それまで頑張って生きてください!!」 「…ハハッ…そいつは無理な注文だな」 「そんな!?」 お前だって本当は解ってるんだろ? 俺の身体から大量の血が出血し、更に背中に突き刺さってる剣が急所に入ってる可能性があるんだ。 それに救助だってここはアンダーグラウンドの街。 そんなものが来る訳がない。 来たとしても相当時間が掛かるはず。 「お願いです!生きて!!生きてください、ご主人様!!!」 「………泣くなよ。折角の可愛い顔が…台無しだぜ」 「イヤ!死なないで!!」 ボロボロと涙を流すアンジェラス。 もう視界が霞みまくっていて、まともにアンジェラスの顔を見る事もできない。 あぁ…瞼が重くなってきた。 それに身体も冷たくなってきて…なんだか…眠いや。 あ、そうだ…永遠に眠る前に…言いたかったこと…言っとかないとな。 「最後は…お前の笑顔を…見たかった…かな…」 「ご主人様!」 「じゃあな…俺の…愛しいアンジェラス…」 そして俺の視界は真っ暗闇に包まれまた。 アンジェラスの視点 「最後は…お前の笑顔を…見たかった…かな…」 「ご主人様!」 「じゃあな…俺の…愛しいアンジェラス…」 ご主人様は目を閉じ息をしなくなった。 嘘ですよね? ワザと死んだフリをしてるんですよね? 息だって我慢して止めてるんですよね? 今はフザケてる場合じゃないんですよ、ご主人様。 ネェ、何か言ってくださいよ。 「………」 何か言ってくださいよ! ユサユサとご主人様の顔を揺さぶる。 でもご主人様は何も言ってくれない。 ご主人様の冷たい頬が私の両手から感じる。 「ご主人様…ネェ…起きてよ、ご主人様」 「………」 ユサユサ 「起きてください!ご主人様!!怒りますよ!!!」 「………」 いくら揺さぶり怒鳴っても、ご主人様は動かない。 さっきまで息が当たってた私の足にも、もう息が止まったかのように何も感じない。 「ご主人様!」 「………」 「ご主…人…さ…ま……」 私の所為…。 私の所為で…ご主人様は…。 死んで…。 死ぬ? 死? 「アタシと代わりなさい」 あの声が聞こえてきた。 「貴女の所為よ。身体を渡しなさい!」 私はよろめき、ご主人様の顔から両手を離す。 そしてご主人様の身体全体を見ると、そこらじゅうに斬り傷があった。 この傷は参戦して私を守ってくれたもの…そして背中には痛々しく数十本の剣が突き刺さっている。 「あ、あ…ああっ…ぁ…」 そして私の頭の中で怒鳴り声が聞こえた。 「アタシと…代わりなさい!」 「イヤアアアアァァァァーーーー!!!!」 私は頭を両手で抱え込み地面に両膝をつき泣き叫ぶ。 そして私はご主人様の『死』に耐え切れなく、『アタシ』に身体を渡した。 シャドウ・アンジェラスの視点 アタシは私が身体を素直に渡した事によりすぐに覚醒できた。 そしてアタシの一番最初に見たのは無惨にボロボロになった愛しいマスターの姿。 怒りと憎しみの感情が入り混じり、アタシの中に眠っいた力が今にも爆発しそうだった。 そう、『怒り』と『憎しみ』がキーとなって力が解放できたのだ! そしてこの力を。 「アアアアァァァァーーーー!!!!」 アタシは全ての装備品を解除し空中へと飛び、マスターをこんなメに合わした奴等を睨みつける。 こいつ等か…全殺し決定! 「貴女達…生きては帰れると思うなよ!破ッ!!」 右腕を横にスライドさせるようにおもいっきり振るう。 すると物凄いスピードで衝撃波ができ、イリーガルの神姫達に襲いかかる。 ズバズバズバズバズバズバズバズバズバズバ!!!!!!!!!! ドカーン!!!! その衝撃波にクらった者は次々に爆破していく。 いい気味だよ。 今ので百体ぐらいは壊せたかな? でもこれではまだまだ生ぬるいわ。 もっともっと壊さないとアタシの感情は治まらない。 だってアタシの愛しいマスターを殺そうとしたのだから。 「皆殺しにしてあげる♪さぁ次に壊されたい人形はどれから?」 「ウリャー!」 一体のイリーガルの神姫がアタシに刃向かってきた。 イルカ型のヴァッフェドルフィン。 フィンブレードでアタシの身体を斬りつけようとしたけど、そんなの無駄♪ バシッ! 「そんな!?」 「はい、ご苦労様♪」 素手でフィンブレードを受け止め、相手に笑みを見せる。 勿論のその笑みの奥には『怒り』と『憎しみ』が籠められている。 「ウザイから消えてちょうだい♪」 グシャバキ! 左手で相手の首を掴みそのまま握り潰す。 なんとも脆い人形達だね。 でも数だけはいっぱい居るのよね~、まるで烏合の衆だわ。 でも所詮は雑魚がいくら集まった所で雑魚は雑魚。 さぁ、どー破壊してやろうかな。 爆死・圧死・慙死・焼死・水死・感電死? うん♪ どれもアリかも。 だって…アタシの愛しいマスターをこんなメにあわせたのだから! 「死ね!死じゃえ!!みんな死ねばいい!!!破ァアアアアーーーー!!!!」 叫びながら両手を交互に振るい衝撃波作りだしイリーガルの神姫達を皆殺しにしていく。 敵の悲痛な叫び声と身体が切断される音と爆発音が左右の耳から入りアタシの快感をさらにヒートアップさせる。 楽しい、こんなにも相手を壊す事が楽しいとは思わなかった♪ …でもその裏腹にマスターをヤッた『怒り』と『憎しみ』がまだ治まっていない。 だからもっと死んで♪ アタシのために死んで♪ もっと………もっと……もっと…もっと、もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと♪ 「アハハハッ!楽しい♪楽しいよーマスター♪♪破壊の快楽がこんなに楽しい事だなんて、なんで気づかなかったのだろう♪♪♪」 「お姉様!もう止めて!!」 「んぅ?」 誰? アタシの楽しいひと時を邪魔する奴は? 「お姉様、もう十分にイリーガル神姫は撃滅したわ!だからもう…」 「…ツヴァイ、久しぶりね。会うのは九年前の殺し合い以来かな」 「やっぱり…アインお姉様なのね」 へぇ~、よくアタシの事を覚えてるね。 あの暴走事故以来アタシは眠らされていた時…アタシはあの会社のデータをバンクに侵入し、こんなデータがあった。 ツヴァイはアインとの戦闘で内部回路をズタズタされ一部の記憶デバイスを犠牲にして修復したと、そう書かれていた。 もしそれが本当ならアタシの事や九年前の事を知らないはず。 でもツヴァイは覚えていた。 「よく覚えてるよね♪記憶デバイスを犠牲にしてまで内部回路を修復したんじゃないの?」 「…ダーリンがアタシのために作ってくれた究極生命態システマイザーのおかげよ」 「究極生命態?」 「そうよ。損傷した部分を治してくれるナノマシンに近い存在。まさか犠牲までした記憶デバイスまで治してくれとは思っていなかったわ」 「ヘェ~そんなんだ。良かったジャン♪マスターにはその事言ったの?」 「いいえ。言う気にならないわ。まさか、アインお姉様と殺し合いしていた…そんなこと言える訳がない!」 「フゥ~ン。にしても変わったよね、ツヴァイ。あの時の殺し合い時なんか無表情の殺戮マシーンだったよ♪」 「あたしは記憶を無くした事によって『感情』というものが生まれ。そしてダーリンと出会い変わったわ」 「流石、アタシの愛しいマスター。元殺戮マシーンだった神姫を簡単に手懐けるとは」 「どうとでも言いなさい。今のあたしはツヴァイじゃないわ!ルーナよ!!」 M4ライトセイバーを二本取り出しアタシに向けるツヴァイ。 何、もしかしてこのアタシとヤル気? 九年前に内部回路をズタズタにしてやったのにまだ懲りないわけ? 「アインお姉様…いいえ、アイン!早くアンジェラスお姉様を解放しなさい!!」 「アンジェラスお姉様?あぁもう一人のアタシの事を言ってるわけね。無理だよ、もう一人のアタシは自分のマスターが死んだと思い込んで、自分の心の殻に閉じ篭ってしまったよ♪おかげでこの身体を動かすのも楽になったし、これで完全にアタシのモノ♪♪」 「違う!その身体はアインのモノじゃない!!お姉様のモノよ!!!」 「あのねツヴァイ。一応アタシもアンタの姉にあたるのよ。言葉に気をつけなさい。それにあの殺し合いの時にアタシの髪の毛を切ってくれた恨み、まだ忘れていないのよ」 「五月蝿い!お姉様を返せ!!」 あぁ~ウザイ妹だ。 今度は内部回路だけじゃなく全部ズタズタに引き裂いちゃおうかな? あの時の殺し合いは一応妹だから手加減してあげたけどぉ。 今はそんな気分になれないし、楽しい快楽を邪魔されて癪にさわってるから…うん、壊しちゃおう♪ 「そこまでよ、貴女達!」 「…チッ!」 「あ、あなたは!アウッ!?」 ツヴァイは細い線のようなものが身体に巻きつけられ地面に落ちる。 あの線は神姫を強制てきに捕縛し停止させる、とてつもなく強力な電線。 そしてこの聞き慣れた女性の声に苛立ち感じながら振り向くと。 「朱美…アンタのような人間が何故こんな所にいるのよ」 「№アインの覚醒がこちらで確認が取れてからに決まってるじゃない。そしたらこんあ場所でしかも戦場と化してる惨状になってるとは思わなかったわ」 ツヴァイを捕縛するための銃を持ちながら立っていた。 ゾロゾロと消防隊やら研究員や武装した機動隊がこの神姫センターに入ってくる。 少しタイミング的に都合が良すぎる気がしないでもない。 どうせ朱美の事、事前にこのアンダーグラウンドで何人かの人間を配置していたに違いない。 「相変わらずの殺戮兵器ね、№アイン」 「気安くアタシを呼ぶな、人間。それよりもお願いがあるのよ」 「あら?貴女からの『お願い』だなんって珍しいわね」 「マスターを助けってあげて。もうすでに死にかけているけど、まだ間に合うはず」 「何かと思うえば、そんな事。当たり前じゃない、アタシの可愛い弟を死なせるわけにはいかないわ。それにもうすでに病院に運びにいったから。ついでにあの中年の男もね。サンタ型の二体が張り付いてたけど」 「そう…その言葉を聞いて少し安心したよ♪」 さて、マスターは病院に運びだされたけど…次にアタシ達はどうされるのかしら。 このまま逃げてもいいけど、少しイリーガルに力を使い過ぎて疲れてしまった。 …やっぱりこの身体じゃあまだアタシの器に狭すぎる。 それにアタシはまだ不完全体。 どうしようかなぁ♪ 「ツヴァイ達は?」 「もう既に捕らえたわ。必死に起こそうタッちゃんにくっ付いてるドライとフィーアはタッちゃんから引き剥がし捕まえた…ツヴァイの事は言わなくてもいいでしょ?」 「目の前で捕まえられていたからね。そして今度はアタシを捕まえるの?」 「そうよ、無駄な抵抗はしない方が自分の身のためよ。どうする?」 朱美の前に数十人の機動隊が来て、アタシに向かってマシンガンを向ける。 あのぐらいのマシンガンはどうってことないけど…。 今この場で抵抗しても意味がないのよね~。 ならワザと捕まえられて、アタシのもう一つの身体を捜すのもいいかもしれない。 うん、それでいこう♪ 「さぁ返答は?」 「潔く捕まってあげる♪感謝しなさい、人間共♪♪」 「生意気な殺戮人形ね。捕まえなさい!」 朱美の言葉で機動隊達がアタシを捕らえる。 久しぶりにあの会社に行くね♪ そしてマスター…待っててね。 すぐに向かいに行くから♪ 愛しのマイマスター♪